見聞録(トゥン・チャンナレットとの会見 2020.1.30)

見聞録(トゥン・チャンナレットとの会見)

 

  久しぶりに訪れたカンボジアのシェムリアップで、ICBLの地雷大使をずっと務めてきているトゥン・チャナレットに会うことができましたので、彼とのやりとりを記事にします。
 

 記憶が正しければトゥン・チャナレットに会うのは三年ぶりだと思うですが、レットは遠くから私を見つけ、笑顔で手を振ってくれました。今回は同行者もいて、次に行く場所もあったので、短時間の滞在でした。一つ心残りは、写真を撮り忘れたことです(後日友人が撮っていたことがわかりました。indexページの写真がそれです。)。もう一度会いに来て撮れ、という神の御告げかも知れません。以下に、彼との短いインタビュー記事をまとめます。当然ですが、Qは私、Aはレットです。では、どうぞ。


Q. 最近の地雷被害者の生活にとって、一番の課題はなんでしょうか?

A. 地雷被害者だけにとどまらず、障害者全般について言えることですが、住むための土地がないことです。かつて彼らは住んでいたシェムリアップ市内から強制的に移動させられていたのですが、最近政府の方針が変わり、生まれ故郷に帰ることができるようになったのです。しかし、すでにその土地は誰かに買い取られてしまっていて、居住を許されないのです。それについて、政府は障害者たちに何の手助けもしていません。深刻な問題です。


Q. 障害者にとって必要なのは、就労技能を身につけ、就労の機会を得ることだと思っていたのですが、そうではないということですね。

A. その通りです。第一番目に重要なのは、彼らが住める土地を手にいれることであり、仕事を得ることは二番目です。なお、障害者が仕事を身につけることについては、イエズス会サービスでは、すでに各種の障害者向けプログラムを実施しています。現在の主流は、事業者の協力を得て、障害者が市内マーケットの各職場で6ヶ月間の現場実習をさせてもらい、技能を身につけるというものです。


Q. 国の障害者支援が十分に行われていないということですが、もう少し詳しく教えてください。

A.カンボジアには障害者支援に関する法律や制度がすでにあるのですが、実際には十分機能していないというのが現状です。例えば、障害者の所得は健常者に比べて半分ほどしかありませんが、障害者支援の法律はあっても国が給与の不足分を補填するというようなことはしていません。私の印象では、国の支援策の到達度は50%というところです。


Q. カンボジアの対人地雷除去の現場について教えてください。

A. カンボジアの地雷除去は依然としてタイとの国境付近で遅延しています。近年、タイ側では、地雷原での地雷除去を進めていますが、カンボジア側は手をつけていません。かつて何度もタイとの国境紛争があったので、再発の場合を恐れ、地雷原を温存したいという空気がカンボジア軍にあるのです。そんなわけで国境付近のカンボジア側には今も民間人の立ち入り禁止区域があり、そこには地雷原もあります。しかし、近隣の住民は生活のためにあえてその立ち入り禁止区域に入らざるを得ず、地雷被害に遭うことがあるのです。


Q. かつてカンボジア政府は10年くらい前に公の場で、国内の地雷除去は20年ほどで完了すると語っていたはずですが、その目標は達成されるのでしょうか?

A. 難しいと思います。なぜなら、政府の地雷除去に関連する部局の高位者が、「地雷除去が完了してしまえば、各国からの支援が受けられなくなって困る」と言っているくらいだからです。地雷除去の遅延は意図的だと思います。この国も例外ではありませが、政府高官が支援金の一部を着服するようなことは世界中で起こっており、ICBLもある程度知っています。しかし、口出しはしません。ただ、アメリカのNGOなどは支援金の使途について詳細に調査・追及しており、不適正な使い方をされていれば、支援を中止する措置も取っています。

 

 
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