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見聞録(その他いろいろ)

「ヒトラーの忘れ物」LAND OF MINE  を観て

2017年1月12日記事

さて、この映画についてですが、まずはひどく批判的に
聞こえることばかりを書きますがご容赦ください。


まず、対人地雷に携わっている世界中の人にとって、
「Land of Mine」が地雷原を現すことは一目瞭然ですが、
この映画の題名にはおよそふさわしくないものでした。
なぜなら内容が対人地雷除去の名を借りた復讐劇であり、
児童虐待であり、深刻なジュネーブ条約違反だからです。

私が対人地雷問題を知った当時、カンボジアの状況として
子ども兵士に地雷を埋設させたり、除去させたりすること、
ポルポトが市民に地雷原を歩かせ、爆発除去させたことの
非人道性を国際世論が激しく非難していました。この映画にも
犬が一匹死んだことに腹を立てた良き軍曹が少年兵にそれを
やらせていました。このような事例は他国でもありました。

情報源は定かでありませんが、15歳から18歳のドイツ少年兵
2600名ほどに地雷撤去をさせるという案を出したのは、
イギリス軍だったと言います。少年兵のうち約半数は作業中に
失敗して死亡重軽傷を負ったそうです。そうやって、除去
された地雷は140万個あまりと記録されています。

しかし、今回の映画で紹介されたデンマークの少年兵に対する
明らかに違法な対人地雷除去のことなど、大量の英文記事も
含め、たったの一行も読んだことがありませんでした。
私たちも、西欧の二重基準に踊らされていたということです。
さらに、この映画が発表された2015年においても、世界的な
対人地雷廃絶組織である”ICBL"が何もコメントしていません。
もちろん、世界中のメディアも沈黙です。ちなみに、デンマーク
は、世界でも主要な対人地雷除去の金銭支援国で名前が挙がる
国です。要するに、どこかの時点で臭いものに蓋をしたのでしょう。
怒りとむなしさを感じています。


さて、対人地雷の除去についてです。実際のところ、350種類は
あると言われる対人地雷のほとんどは第二次世界大戦中にドイツ
が開発しました。映画制作者がそのことを知ってか、いろいろな
タイプの対人地雷がこの映画に紹介されていました。ですから、
そのような多種多様な対人地雷に対処するための訓練は非常に
時間がかかり、生半可な訓練では死者が増えるばかりです。
最後のテロップで借り出された少年兵の半数が死亡したという
内容が流されましたが、この映画に描かれた有様はまさに「拷問」
であり、「虐殺」です。

最初の訓練場面に出て来る地雷は「対戦車地雷」です。この手の
ものは100キログラム以上の圧力がかからないと爆発しないもの
です。信管の除去で失敗して爆発するという場面が出てきますが、
爆発したら、あんなやわな防護壁ではとうてい防げません。

途中、少年が両手を吹き飛ばされる場面に目を覆ったかも知れ
ませんが顔の間近で地雷が爆発して顔が損傷しないことなど
有り得ません。昨今の完全防護服と防護マスクをしていても
即死か両目の視力を失うことがほとんどです。もちろん映像
ですから、描写できる限界はあるでしょうが、観ているものに
誤解を与えることは対人地雷除去の運動にとっては明らかに
マイナスです。

ICBLが突っ込みを入れても当然だと思うのですが完全沈黙です。
トラックに除去した地雷を積んでいるときの爆発なども、
信管を抜いた対人地雷が爆発することは100%有り得ません。
それに、対人地雷をあんなふうにぞんざいにトラックに積んで
どこかに運ぶなど、絶対にしません。基本は除去した場所で
誘爆させて最終処分とします。

つい、長々と書いてしまいました。最後にひとつだけ、追加
します。軍曹が生き残った4名を逃がす場面がありましたが、
私はあの場面で凍り付きました。なぜなら、当時の国境線には
多くの地雷原が放置されていたからです。結局、映画では
そこまで残酷な結末にはしていなかったのですが、その後
無事に彼らが故郷に帰ることができたのか、とても心配でした。
対人地雷問題に関わり、地雷原にも行くとものの見方が変わって
しまうという実例でした。

なお、本作はデンマークのアカデミー賞にあたるロバート賞で
作品賞や監督賞を含む6部門を独占しました。世界各国の国際
映画祭でも高く評価され、第28回東京国際映画祭では
ラスムスン役のローラン・ムラとセバスチャン役の
ルイス・ホフマンが揃って最優秀男優賞を受賞しました。




(注釈:ジュネーブ条約)

1929年にジュネーヴで締結された俘虜の待遇に関する
条約(Geneva Convention of July 27, 1929. Article 32)で、
捕虜(POW)を不健康または危険な仕事に従事させることは
禁じられており、懲罰的な重労働をさせてはいけないことに
なっています。

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