定期講演会記録33


第33 中部地雷問題支援ネットワーク講演会
対人地雷とIED(即席爆発装置)問題



開催日時  平成27年11月22日(日) 午後2時00分~4時00分、




開催場所  名古屋市北生涯学習センター 第3集会室




講  師  白井敬二(中部地雷問題支援ネットワーク代表)



参加者   10名

講演会にご参加いただき感謝申し上げます。


本日は、対人地雷の問題同様に深刻な問題である
IED(即席爆発装置)についてお話します。
途中、少し刺激的な映像もあり不快な思いを
させるかも知れませんが、ご容赦ください。





【IEDとは何か】


まず、IEDですが、Improvised Explosive
Devicesの略語です。


「即席爆発装置」と呼ばれ、かつては「手製爆弾」
とも呼ばれました。不発弾などを利用して爆発装置
を作る場合が多いです。


なお、利用のされ方で、「路肩爆弾」、「車両爆弾」
とも呼ばれます。「自爆ベルト(チョッキ)」
IEDの一種です。


起爆装置には圧力スイッチ、携帯電話、ワナ線など
多様な素材が使われます。



【日本はすでにIED被害国】




1974年8月30日、三菱重工本社が手製爆弾(IED)
で爆破され、通行人8名が死亡、359名が重軽傷を
負いました。
その後三井物産本社(10月14日)、帝人中央研究所
(11月25日)、大成建設本社(12月10日)でも、
爆破事件発生しました。


過激派による爆弾闘争の時代でした。「腹腹時計」
という爆弾製造教科書が密かに出回っていました。





【対人地雷洗面禁止条約とIED】


HRWのスティブ・グースの確認表明(2014.11.12
CCW第16回年次会議 改正議定書2の議題について)


「意図的でない被害者活性型IED(罠線、踏圧など)
の使用・生産・売買・貯蔵は対人地雷全面禁止条約に
より禁止されている」。


(注)つまり、罠線、踏圧で爆発するIEDは対人地雷
全面禁止条約で使用が禁止されるということです。





【対人地雷問題の現状】
ランドマインモニターレポート2014より


・対人地雷全面禁止条約参加国 162カ国
・対人地雷使用国 シリア・ミャンマー
・対人地雷被害者3308人(2012年 4325人)
・対人地雷被害生存者 少なくとも226000人
・IED被害国 8カ国
・地雷除去面積 185㎢(4分の3はアフガン,
カンボジア、クロアチア)


IEDによる被害者が増えており、対人地雷と
ほぼ同数の被害者を生んでいます。





【IEDの実際】


映画化されましたが、実際にはもっと厳しい状況です。
ザ・”リアル”ハート・ロッカー(2010年)





IEDを除去していますが、これは
例外的です。機材も防護服もロボット
もなしでは、いつか事故がおきます。
クルド兵のIED処理





典型的な路肩爆弾のIEDです。




タイの爆弾テロ事件で使われた
「パイプ爆弾」です。これもIEDです。






【IEDの基本構造】


・電力供給ユニット(電波起爆の場合)
・引き金(電波、罠線、圧力板など)
・起爆装置(雷管など)
・主爆薬(不発弾や対人地雷の爆薬)
・容器


非常にシンプルで、少し教育を受ければ
誰にでも製造できます。






【IEDのコスト】


駐留アメリカ軍の試算では200ドル
(2011年)と報告されていますが、
根拠は示されていません。








【IEDの歴史】


IED使用には数百年の歴史があると言われ
ますが、第二次世界大戦で飛躍的に発達し、
1960年代に北アイルランド紛争で多用され
ました。





【IEDは米軍の脅威】


2001年から2015年の間に、イラク・
アフガニスタンで死亡した兵士6840名の
うち、2550名がIEDによるものでした。




IEDによる攻撃の映像です。年間200回
程度パトロールしていましたが、平均15回
ほど攻撃されたという記録があります。
米軍へのIED攻撃(実写)





【TBI(traumatic brain injury)の問題】


「外傷性脳損傷」のことです。
イラク、アフガン派遣兵士の場合、
ほとんどがIED攻撃によるものと推定されます。
2009年時点で約2万人以上発症しています。
著しい記憶障害やめまい、頭痛、集中力
低下など 通常の生活に支障をきたす深刻な
症状です。








【自衛隊の後方支援もIED攻撃される】


「人の殺傷や物の破壊行為が行われているか
否かという明らかな事実により客観的に判断」
し、活動を一時休止、避難するなどして危険を
回避する」と、政府は2015年に国会答弁
(後方支援がリスクを高めない理由)しました。
しかし、まったくの絵空事です。現実には
IED(特に路肩爆弾)は判断する間も与えず
殺します。





【増え続けるIEDによる一般市民被害者】


NGOが調べたIEDによる民間被害者の
推移です。80%が市民の被害者です。



https://aoav.org.uk/wp-content/uploads/2015/04/AOAV-IED-data-minigraphics1.jpg





【テロに使われるIED】


タイの爆弾テロ、フランスのテロ、いずれにも
IEDが使用されています。(パイプ爆弾、自爆ベスト)
テロの爆発物はすべてIEDと言ってよいのです。
もし、日本で爆弾テロが再び起きるなら、IEDが
必ず使われます。








【IEDに注意を】


IEDは遠い世界の無関係な問題ではありません。
今後テロのさらなる拡散であなたもIED被害者
になる可能性があります。
IED対策/被害者支援に目を向けることが必要です。




ありがとうございました。








ページトップへ


ホームへ


ICBL関連


定期講演会記録へ


見聞録へ


出張講演記録へ





inserted by FC2 system