ICBL関連 2017

ICBL ランドマインモニター関連

 

 
ランドマイン・モニター 2017 主な調査結果
 

 【主な注目点】

 対人地雷全面禁止条約が交渉され署名されてから20年が経過した今も、条約は驚異的な力で人命を助け続けています。ランドマインモニター(Landmine Monitor)2017は、我々が地雷無き世界の目標に向かって進んでいる詳細をお伝えします。現在162カ国(注 2017年12月13日にスリランカが条約に参加し、163カ国になりました)が地雷禁止条約に参加し、主要条項を守っています。しかし、残念ながら少数の国と非国家武装集団が、即席地雷を含む対人地雷を使用しており、2016年には非常に多くの犠牲者が出ました。多くの国で地雷除去活動を継続されており、2016年には地雷対策に対する国際資金が増加しました。しかし、締約国のうち条約で定めた除去期限を守られるのはごく少数の国であり、除去の予定が軌道に乗っているとは思えません。また、地雷被害者への支援は不十分なままです。

 

 

 

 

 

(対人地雷の使用)

 2016年10月から2017年10月まで、ランドマインモニターは、ミャンマーとシリアの政府軍による対人地雷の新たな使用を確認しましたが、両国とも対人全面禁止条約の締約国ではありません。
 
•対人地雷は、ミャンマーの政府軍によって過去20年間、シリア政府軍によって2012年以降使用されてきました。
 
・報告期間中、対人地雷全面禁止条約の締約国による対人地雷の使用についての供述はありませんでした。しかし、非国家武装集団(NSAG:Non -Stake Armed Groups)は、アフガニスタン、イラク、ナイジェリア、ウクライナ、イエメンなどを含む少なくとも9カ国で対人地雷を使用しました。
 
•ランドマインモニターが1999年に出版を開始して以来、2016年に初めてコロンビアでの非国家武装集団による対人地雷の新たな使用がありませんでした。
 
•ISIS(イスラム国)による即席地雷の広範な使用が、新たな犠牲者と汚染をもたらしました。
 


  (被害者)

・2016年には2年連続で、対人種地雷と同じように動作する即席爆弾、クラスター爆弾、その他の戦争残存爆発物(Explosive Remnants of War)も含む地雷による多数の死傷者が記録されました。
 
•2016年には世界中で8,605人の地雷/ERW犠牲者が記録され、うち少なくとも2,089人が死亡しました。
 
•地雷被害者総数が増加した理由の大半は、アフガニスタン、リビア、ウクライナ、イエメンの武力紛争で記録された死傷者によるものでした。しかし、激しい戦闘が続くため正確なデータ収集は依然として困難です。
 
•2015年の急激な地雷被害者増加に伴い、2016年の年間犠牲者総数は、史上最悪の犠牲者数である1999年(9,228人)以来のモニターデータの中で最悪であり、即席地雷によるこれまでで最悪の犠牲者数も記録しました。
 
 2016年の被害者は、52カ国と他の4地域で確認されましたが、そのうち35カ国は対人地雷全面禁止条約の締約国です。
 
•記録された地雷/ ERWの死傷者の大部分は、過去3年間のランドマインモニターでも同様の被害状況が知られていたように市民(78%)でした。
 
•2016年に、年齢がわかったすべての民間人の死傷者のうち子どもが42%を占めました。
 
•女性と女児は、性別が分かっていた全死傷者の16%を占め、2015年および近年に比べわずかに増加しました。
 
•1999年に対人地雷被害者の世界的な追跡調査が開始されて以来、約8万人の生存者を含む11万以上の地雷/ ERW犠牲者を記録しています。
 
 

(対人地雷による汚染と除去)
 
 
 2017年11月現在、61の国と地域が対人地雷によって汚染されています。
 
 
 
•これには、対人地雷全面禁止条約の締約国33カ国、非締約国24カ国、その他4地域が含まれます。
 
 
 
・アルジェリアは2017年2月に地雷除去の完了を宣言しました。モザンビークは2015年に地雷除去完了を宣言しましたが、その後2016年と2017年にそれまで知られていなかった対地雷汚染地域を発見し、2017年5月に除去を完了しました。
 
 
 
•アフガニスタン、アンゴラ、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カンボジア、チャド、クロアチア、イラク、タイ、トルコには、大規模な対人地雷除汚染(全国で100㎢以上)があると考えられています。
 
 
 
・2016年には世界中で約170平方キロメートルの土地から地雷が除去されたと報告されており、これは2015年とほぼ同面積です。
 
 
 
•2016年には、232,000個以上の対人地雷と約29,000個の対車両地雷が除去されました。これは2015年の成果よりも大幅に増加しました。
 
 
 
•アフガニスタン、クロアチア、イラク、カンボジアで2016年に除去された地域の除去面積の割合が大きく、記録された除去面積全体の83%以上を占めています。
 
 
 
•過去5年間(2012年~2016年)に、約927㎢の汚染地域が除去されています。地雷原と戦闘地域での除去によって、110万個の対人地雷と68,000個以上の対車両地雷が除去されました。
 
 
 
 対人地雷全面禁止条約が1999年に発効して以来、28カ国、およびその他の1地域が自国領土内のすべての地雷原から地雷除去を完了しています。
 
 
 
•ウクライナは、対人地雷全面禁止条約第5条に違反しています。これは、2016年6月1日の除去期限が経過してしまったにも関わらず、ICBLに延長を申請しておらず、延長が正式に認められていないためです。
 
 
 
•対人地雷による汚染地域が新たに発見されたヨルダンとナイジェリアは、対人地雷全面禁止条約第第5条に基づく義務を負うと宣言し、地雷除去を完了するための新たな期限を申請しています。
 
 
 
•2016年の第15回締約国会議でICBLは締約国であるエクアドル、ニジェール、ペルーに対し、申請を受けていた地雷除去完了の締め切り期限の延長を承諾しました。 アンゴラ、エクアドル、イラク、タイ、ジンバブエの5締約国は、2017年12月の第16回締約国会議において地雷除去完了の締め切り期限を延長してもらうように申請しました。
 
 
 
•締約国の内、対人地雷全面禁止条約が要求する地雷除去完了の締め切り期限を守られそうだと表明しているのはチリ、コンゴ民主共和国、モーリタニア、ペルーの4カ国のみです。
 
 
 
 
 
 
 

  (対人地雷対策支援)

 援助国と被災国は、2016年中に地雷対策活動に関する国際的および国内的な支援として約5億4450万ドルを拠出しましたが、これは2015年(5億520万ドル)から3930万ドル(7%)増加した金額でした。

 

 

 

 32の援助国は、40の国とその他3地域での地雷対策活動に対する国際的な支援として4億7,950万ドルを拠出しました。これは2015年からほぼ8,550万ドル(22%)増加したことを示しています。

 

 

 

 一方、埋設地雷の影響を受けている11カ国は、自国の地雷対策プログラムへの国家支援として8500万ドルを提供しましたが、この金額は2015年に比べて4,620万ドル(35%)減額したと報告されています。なお、3,500万ドル以上の減額の原因がアンゴラ一国にあります。

 

 

 

 3年間に渡り、支援額減少傾向(2012年から2015年の間に26%の減少)が続きましたが、2016年に提供された国際的な支援額の合計4億7,950万ドルは、2012年に提供された4億9890万ドルと2010年の4億8040万ドルに次いで、過去10年間で3番目に高いレベルです。

 

 

 

•米国、欧国連合(EU)、日本、ドイツ、ノルウェーの上位5カ国の地雷対策活動援助国が、国際資金提供全体の70%を拠出し、3億3,560万ドルを拠出しました。

 

 

 

 2016年には20の援助国が資金提供を増やしましたが、EUとドイツによる支援額増加が世界全体の支援額増加のうち、5500万ドル(64%)を占めました。

 

 

 

•イラク、アフガニスタン、クロアチア、カンボジア、ラオスの上位5つの受益国は、2億2,870万ドル、すなわち2016年の全国際支援の54%を受け取りました。

 

 

 

•イラクは、他のどの国よりも多くの資金援助を受けています。

 

 

 

 




(被害者支援)

 2016年から2017年までに、地雷犠牲者の数が多い地雷禁止条約の締約国は、2014年〜2019年のマプト行動計画の約束を履行するには十分な資源が不足していました。以下の所見は、かなりの数の地雷被害者を抱える31の締約国に関するものです。
 
•締約国の約3分の2が積極的な被害者支援の調整メカニズムを有していましたが、生存者の代表者がそれに参加しているのは、20の締約国の中のたった17の調整プロセスだけでした。そしてその場合であっても、しばしば参加した生存者の貢献(提供する意見)を施策に取り入れているわけではありません。
 
•締約国は、もっと被害者団体の能力を高め、すべての関連案件への被害者の有意義な参加を促進するために、国家として具体的に何をしているかを明らかにしていく必要があります。
 
•多くの国や地域では、リハビリサービスを提供する施設の数は限られており、必要としている遠隔地の被害者たちはだれも利用できないことが多く、時にはサービスを利用するための料金が法外に高すぎて被害者が使えないこともあります。しかし、2016年から2017年にかけて、各国で多くの待ち望まれていた人工補綴(義肢)センターの建設があったことが報告されました。
 
•対人地雷被害者の雇用、訓練、およびその他の収入を生み出す支援活動への取組みは、過去数年間に多くの締約国で顕著に減少しており、被害者にとって生計手段を得る機会こそが最も必要だという現実との間に甚だしい乖離を生じています。
 
 

 
 (保有地雷の廃棄、生産、移転

 締約国は、2016年に廃棄された220万個以上を含み、これまでに合計5,300万個以上の備蓄対人地雷を廃棄してきました。
 
•ベラルーシは、備蓄地雷の廃棄について2008年以来ずっと条約に違反していましたが、2017年4月にやっと備蓄していた対人地雷の廃棄を完了しました。
 
•地雷全面禁止条約に加盟していない35カ国のうち31カ国には、対人地雷が備蓄されています。
 
•1999年には、各国は対人地雷を約1億6,000個備蓄していると言われていましたが、今日では世界全体で5千万個未満の備蓄数かも知れないと言われています。
 
•アフガニスタン、インド、イラク、リビア、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、シリア、ウクライナ、イエメン、西サハラ、に存在する非国家武装勢力(NSAG:Non-State Armed Groups)と犯罪グループは対人地雷を保有していると報告されています。
 
 過去に対人地雷を備蓄していた34国を含む86の締約国は、今では対人地雷を全く保有していないと宣言しています。
 
•2017年9月、アルジェリアは、対人地雷除去計画を完了した後、訓練目的で保有していた対人地雷5,970個を廃棄しました。これは自国の埋設地雷除去計画が完了したことを受けた措置です。
 
 エジプト、イスラエル、ネパール、および米国(地雷禁止条約の締約国ではありません)の4ヶ国を含む、41カ国が対人地雷の生産を停止しました。
 
•中国、キューバ、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、ベトナムの11カ国は前回のランドマインモニター報告と変わらず、今でも対人地雷を生産する権利を主張しています。
 
•これらの国のほとんどは積極的に地雷を生産するとは考えられていないのですが、インドが現在も積極的に生産しているという新しい情報が入ってきました。
 
 備蓄地雷の廃棄が宣言されていたウクライナとイエメンの紛争において、工場で生産された対人地雷が紛争で使われましたが、それは当事者の国家内部で、あるいは国外からの対人地雷の移転が起こっていることを示しています。
 
•エジプトとインドの企業が、2017年2月にアブダビで開催された国際的な武器展示会で、対人地雷またはその部品を紹介する販売パンフレットを参加者に提供しました。
 
•対人地雷の輸出について、対人地雷全面禁止条約に参加していない少なくとも9カ国(中国、インド、イスラエル、カザフスタン、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、米国)が公式に一時停止をしています。
 
 


(条約の遵守)

 
 一般に、締約国の対人地雷全面禁止条約の履行と遵守は厳格になされています。条約による主要な義務は大部分が尊重されており、あいまいなことが生じた場合には納得のいく方法で対処されています。しかし、2〜3の問題点について法令遵守に関する懸念が残っています。
 
•ウクライナは、対人地雷全面禁止条約第5条に違反しています。同国は、2016年6月1日に除去期限が来たのですが除去は終了しておらず、そのときに期限の延長を要求しなかったので延長が認められていない違反状態なのです。
 
•イエメンでは、2011年に国軍が対人地雷を使用して条約に違反したことが確認されたのですが、2017年11月現在、調査は未だに保留のままです。
 
•ギリシャとウクライナは、備蓄した対人地雷の廃棄を完了するための期限を過ぎています。ウクライナは490万個の対人地雷を保有し、ギリシャは643,267個の対人地雷を保有しています。
 
•合計71の締約国は、訓練と研究目的で対人地雷を保有していると報告していますが、うち37カ国は1,000個以上を保有しています。特に、フィンランド、トルコ、バングラデシュの各国には12,000個以上の対人地雷が残っています。
 
•2016年の年次報告書を提出した締約国は48%に過ぎませんが、前年(45%)からはわずかに増加しました。合計83カ国が2016年の年次報告書を提出していません。なお、対人地雷全面禁止条約による最初の報告書さえ提出していない締約国が一カ国だけであります。それはツバルで、2012年8月28日期限の報告書も出していないのです。


(参考)

対人地雷全面禁止条約 第五条

地雷敷設地域における対人地雷の廃棄

1 締約国は、自国の管轄又は管理の下にある地雷敷設地域におけるすべての対人地雷につき、この条 約が自国について効力を生じた後できる限り速やかに、遅くとも十年以内に、廃棄し又はその廃棄を確 保することを約束する。

2 締約国は、自国の管轄又は管理の下にあり、かつ、対人地雷が敷設されていることが知られ又は疑 われているすべての地域を特定するためにあらゆる努力を払うものとし、自国の管轄又は管理の下にあ る地雷敷設地域におけるすべての対人地雷につき、当該地雷敷設地域におけるすべての対人地雷が廃棄 されるまでの間文民を効果的に排除することを確保するためこれらの地域の外縁を明示し並びにこれら の地域を監視し及び囲いその他の方法によって保護することをできる限り速やかに確保する。その外縁 の表示は、少なくとも、過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器 の使用の禁止又は制限に関する条約に附属する千九百九十六年五月三日に改正された地雷、ブーピート ラップ及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書に定める基準に従ったものとする。

3 締約国は、1のすべての対人地雷について1に規定する期間内に廃棄し又はその廃棄を確保するこ とができないと認める場合には、当該対人地雷の廃棄の完了の期限を最長十年の期間延長することにつ いて締約国会議又は検討会議に対して要請を行うことができる。

4 3の要請には、次の事項を含める。

(a) 延長しようとする期間
(b) 延長の理由についての詳細な説明(次の事項を含む。)

(i)国の地雷除去計画によって行われる作業の準備及び状況 (ii)自国がすべての対人地雷を廃棄するために利用可能な財政的及び技術的手段 (iii)自国による地雷敷設地域におけるすべての対人地雷の廃棄を妨げる事情
(c) 延長から生ずる人道上の、社会的な、経済的な及び環境上の影響

(d) 延長の要請に関するその他の情報

5 締約国会議又は検討会議は、4に規定する要素を考慮の上、期間延長の要請を評価し、出席しかつ 投票する締約国の票の過半数による議決で当該要請を認めるかどうかを決定する。

6 延長は、3から5までの規定を準用して新たな要請を行うことによって更新することができる。締 約国は、新たな期問延長を要請するに当たり、その前の期間延長においてこの条の規定に従って実施し てきたことについての関連する追加的な情報を提出する。 



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