ICBL関連 2022


ICBL ランドマインモニター関連

 

 
ランドマイン・モニター 2022 主な調査結果
 

2022年は、対人地雷全面禁止条約が採択され署名が開始されてから25年、地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)が創設されてから30年の節目の年です。以来、同条約は対人地雷廃絶のための強力な国際的枠組みを確立し、人命と生活の保護に目覚しい成果を上げてきました。ランドマインモニター2022は、地雷のない世界という条約の究極の目的達成に向けた進捗状況と残された課題を追跡しています。
 
過去5年間に新たな参加国がなかったにもかかわらず、164カ国が条約の義務に拘束を受け、条約内容の実現に向けて取り組んでおり、まだ参加していない33カ国のほとんども条約の主要条項を遵守しています。
 
対人地雷に対する規範に対する最大の課題の一つは、新たな対人地雷の使用です。報告期間中、非締約国のミャンマーとロシア、および少なくとも5カ国において非国家武装集団(NSAGs)による新たな対人地雷の使用をランドマインモニターが確認しました。
 
地雷と爆発性戦争残存物(ERW)による死傷者は、10年以上にわたる歴史的な減少の後、過去7年間は憂慮すべき高水準にあります。2021年も例外ではありませんでした。この傾向は、2015年以降に見られるようになった紛争と即席地雷による土地の汚染増加の影響が大です。記録された犠牲者のほとんどを一般市民が占め、その半数は子どもでした。
 
地雷で汚染された土地の除去に向けた努力が続けられていますが、特に多くの締約国における除去の遅れや活動の不足への対応、地雷生存者と影響を受けた共同体のニーズが適切に満たされることを保証する上で、まだやるべきことは多いのです。
 
過去20年間、条約に参加している国々も参加していない国々も、ともに地雷対策活動に多大な資金提供してきました。このことは、この人道的な軍縮条約が体現している友好的な協力関係の強い変革力を示しています。しかし国際的な危機が増大し続け、他の分野に支出する需要が高まっているため、状況は以前より不安定になっています。それが、近年における地雷対策支援の減少につながっています。この現実に対処するためには、支援国間の調整を強化し、各国の支援能力の溝を埋めるべく、多額の投資を行うことが必要です。
 
 

 
 
(禁止事項)
 
 
 
・使用


2021年半ばから2022年10月にかけて、ランドマインモニターは、対人地雷全面禁止条約に参加していないミャンマーとロシアによる対人地雷の新たな使用を確認した。

- ウクライナでは、ロシアが2022年2月24日に侵攻して以来、少なくとも7種類の対人地雷がロシア軍によって使用されています。

- ミャンマーの政府軍は、報告期間中、携帯電話の電波塔、採掘企業、パイプラインなどのインフラ周辺を含め、広範囲に対人地雷を使用しました。

非国家武装集団は、報告期間中、中央アフリカ共和国(CAR)、コロンビア、コンゴ民主共和国(DRC)、インド、ミャンマーの少なくとも5カ国において対人地雷を使用しました。
 


・備蓄地雷の破壊と地雷の保持

対人地雷全面禁止条約締約国は、5,500万個以上の対人地雷を廃棄しました。

- スリランカは、2021年に備蓄地雷の破壊を完了した最後の締約国であり、備蓄破壊の完了を宣言した国の総数は94カ国となりました。

- 締約国であるウクライナとギリシャは、合わせて約360万個の破壊すべき対人地雷を残しています。両国とも対人地雷全面禁止条約に定められた備蓄地雷の廃棄期限を過ぎており、条約に違反しています。

- 2021年中にギリシャ、ウクライナのいずれからも備蓄地雷の破壊は申告されませんでした。

合計69の締約国が、訓練・研究目的で合計13万個以上の対人地雷を保持していると報告していますが、そのうち28カ国はいずれも1,000個以上の対人地雷を保持しています。


・生産

ランドマインモニターは、11カ国を対人地雷の生産国と認定しています。中国、キューバ、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、ベトナムの11カ国です。

- この数字は、対人地雷の生産または取得の禁止を含む対人地雷全面禁止条約の中核的条項のほとんどを再調整し直した米国(US)の政策変更に伴い、ランドマインモニター2021で報告された国より1カ国少なくなっています。

- 対人地雷を積極的に生産している可能性が高いのは、インド、イラン、ミャンマー、パキスタン、そしてロシアです。

- ロシアは新型の対人地雷を開発・生産しており、2019年と2021年に製造されることを示すマークが付けられた対人地雷があります。

- 2021年12月に新型の対人破砕地雷70万個がインド軍に納入されました。
 
 



(影響)


・死傷者数


2021年には、少なくとも5,544人の対人地雷/戦争残存爆発物による死傷者が記録されました。その内訳は2,182人が死亡、3,355人が負傷し、7人の犠牲者の生存状況は不明でした。

- 記録された対人地雷/戦争残存爆発物による死傷者の4分の3以上は、生死が判明している一般市民(4,200人)でした。

- 年齢が判明している一般市民の死傷者の半数は子ども(1,696人でした)。

- 例年と同じく、性別が判明している死傷者の大半(81%)は男性と少年(2,675人)でした。

2021年の死傷者は50ヵ国とその他の地域で確認され、そのうち36ヵ国は対人地雷全面禁止条約の締約国です。

- 対人地雷全面禁止条約に参加していないシリアは2年連続で年間死傷者数の最多(1,227人)を記録し、10年間以上にわたって年間死傷者数が1000人を超えている締約国のアフガニスタン(1,074人)が僅差で続いています。

- 2021年に100人以上の死傷者を記録した他の締約国は以下の通りです。コロンビア、イラク、マリ、ナイジェリア、イエメン。


・汚染状況

少なくとも60ヵ国とその他の地域が対人地雷によって汚染されています。

- これには、対人地雷全面禁止条約第5条に基づく除去義務を宣言した33の締約国、締約国でない22の国、およびその他の5つの地域が含まれます。

- さらに7つの締約国が、即席地雷による汚染の疑いや既知の対人地雷の汚染に関する情報を提供する必要があります。その7ヵ国とは、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ共和国、マリ、フィリピン、チュニジア、ベネズエラです。


・地雷除去

締約国は、2021年に少なくとも132.52km²の対人地雷に汚染された土地の除去と11万7千個以上の地雷の破壊を報告しました。

- これに対し、2020年には146.04km²が除去され、約135,000個の地雷が破壊されたと報告されていました。

- カンボジアとクロアチアは、2021年の地雷汚染地域の除去面積が最大で、合計78km2以上を除去し、7,500個以上の対人地雷を破壊したという報告がありました。

- 2021年中は多くの締約国において、土地の安全化の進展はごくわずかで、11カ国において1km2未満の対人地雷除去、8カ国では対人地雷の除去なしと報告しています。


23の締約国は、2025年以前に、あるいは遅くとも2025年までに、第5条の土地の安全化義務を果たすための期限を設けており、9つの締約国は2025年以降に期限を設けています。こうした期限を守ることができるのは、ごくわずかだろうと見られています。

- スリランカとジンバブエだけが、土地の安全化の期限を守るための目標設定をしているようです。

- エリトリアは、土地の安全化の期限を守らず、期限の延長申請も行っていないため、依然として条約違反の状態です。


・回避教育

対人地雷汚染の影響を受ける人々への回避教育は、2021年に少なくとも30の締約国で実施されました。

- 13 の締約国は、2021 年に回避教育活動の対象を絞り込むため、優先順位付けの仕組みを導入していると報告しました。

- 2022年に土地の安全化の期限を延長する要請を提出した8つの締約国のうち、回避教育のための費用と詳細な複数年計画を添えていたのは2ヵ国だけでした。

回避教育の提供は、いくつかの締約国においてCOVID-19の大流行による影響を受け続け、行動制限のために対面式の集会や大規模な運動などの対面式活動が制限され、学校は閉鎖されたままでした。半数以上の締約国で、回避教育のメッセージを伝えるためにマスメディアやインターネット方式が使用されました。


・被害者支援

2021年、医療とリハビリテーションの活動は依然として資金不足のままで、多くの国でアクセス、調整、専門知識、物資の供給などにおいて、ますます多くの課題に直面しました。

- 地雷・戦争残存爆発物の被害者に対する責任が定められている34の締約国のうち、被害者支援または関連する障害者計画があり、支援の必要性と実際の支援との隔たりに対処しているのは14ヵ国だけでした。少なくとも10ヵ国は、今後被害者支援の実施に関連した国家戦略の草案を作成または採択する必要があります。

- 少なくとも22の締約国が「活発な」調整機能を持ち、その3分の2の締約国で生存者の代表が調整過程に参加していました。しかし、COVID-19対策により、そのような過程は混乱し、参加機会も制限されました。

- 地雷被災国の締約国では、医療制度が危機や紛争のために崩壊寸前まで追い詰められ、リハビリテーション制度はCOVID-19流行前よりもさらに大きな支援を必要としていることがよくあります。

- COVID-19の大流行に見舞われた多くの締約国、特に生計の機会が最も必要とされる遠隔地では、被災者やその他の障害者の経済的な自立の機会へのアクセスに大きな格差が残っています。


・地雷対策への支援

2021年、地雷対策に対する世界の支援は7%(4460万米ドル)減少し、支援国と地雷被災国から合計5億9890万米ドルの国際支援と国内支援が行われました。

- 13 の地雷被災国からは、合計で 5540 万ドルの国内支援がありました。

- 32の支援国及び団体が地雷対策に合計5億4350万ドルの国際支援を提供しました(2020年から4%減少)。

支援基盤と最も多くの国際地雷対策支援を受ける国のグループは、過去20年間ほとんど変わらず、より多様化する方向に移行していません。

- 2021年には、15大支援国が国際支援額全体の過半数を占め、合計で5億2450万ドル(97%)を提供しました。少数の支援国への依存は、地雷対策活動の持続可能性に対する深刻なリスクになります。

- 被害者支援のための国際支援は、2016年以降で最低の記録となりました(2,560万ドル)。2021年中、地雷被害生存者の数が多い27の締約国が、直接的な被害者支援の資金を受け取っていません。

- 地雷汚染地域の規模が小さい締約国は、引き続き受け取る資金援助が少額です。地雷の影響を受けている9つの締約国は、2021年に地雷除去および/または回避教育計画を実施するために外部からの支援を受けられませんでした。
 


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