ICBL関連 2021


ICBL ランドマインモニター関連

 

 
ランドマイン・モニター 2021 主な調査結果
 

 

1997年に制定された対人地雷全面禁止条約の現況



対人地雷全面禁止条約には164の締約国があり、署名国であるマーシャル諸島は批准に至っていません。

3年連続で、11の非署名国を含む169の国家が、条約の普遍化と完全な実施を求める年次国連総会(UNGA)決議に賛成票を投じました。

•決議に反対票を投じた国はなく、パラオとジンバブエの締約国を含む17ヵ国が棄権した。
 

 

(対人地雷の使用)
 
 2020年半ばから2021年10月まで、ランドマインモニターは、対人地雷全面禁止条約の締約国ではないミャンマーの政府軍による新たな対人地雷の使用を確認しました。

・2020年後半のナゴルノ・カラバフをめぐる紛争中に対人地雷の新たな使用が発生したという兆候がありましたが、新たな使用を確認することも、特定の戦闘部隊に責任を負わせることもできませんでした。
 

非国家武装勢力(NSAG)は、報告期間中に少なくとも6か国(アフガニスタン、コロンビア、インド、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン)で対人地雷を使用しました。

・カメルーン、エジプト、ニジェール、フィリピン、タイ、チュニジア、ベネズエラで非国家武装勢力が散発的に対人地雷を使用したという未確認の報告がありました。
 
 
 
(備蓄対人地雷の破壊と対人地雷の保有)


対人地雷全面禁止条約の締約国は、2020年に破壊された106,500個以上を含む、5,500万個以上の備蓄対人地雷をこれまでに破壊しました。

・スリランカが2021年に備蓄対人地雷の破壊を完了し、備蓄対人地雷破壊の完了を宣言した国の総数は94ヵ国になりました。

・ギリシャとウクライナは、備蓄対人地雷の完全な破壊の期限を逃したため、依然として条約に違反したままです(条約による期限はそれぞれ2008年と2010年です)。

・ウクライナ(330万個)とギリシャ(343,413個)の2つの締約国は、破壊されていない約360万個の対人地雷を保有しています。
 

合計63締約国が、訓練と研究の目的で合計135,000個を超える対人地雷を保有しており、そのうち30ヵ国がそれぞれ1,000個を超える対人地雷を保有していると報告しています。

・チリは、報告期間中に残りの保有していた対人地雷をすべて破壊しました。

・ブルンジ、カーボベルデ、ジブチ、ナイジェリア、オマーン、セネガル、トーゴの7締約国は、許可された目的のために保有している対人地雷を消費したことを報告していません。

 
 
 
 
(対人地雷の生産)
 
ランドマインモニターは、中国、キューバ、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、米国(US)、ベトナムの12ヵ国を対人地雷生産国として特定しています。 この報告は昨年と同じです。

・ロシアと米国は両国とも、新しい対人地雷装置の開発と試験を行っています。開発の中心は対車両地雷ですが、この種の地雷には犠牲者によって爆発する要素が含まれるかも知れません。

・ロシアはまた、少なくとも2015年から開発が続けられている新しい型の対人地雷であるPOM-3を発表しました。これは、振動によって爆発します。
 
 
 
 
(対人地雷による死傷者)
 
 2020年には6年連続で、即席型を含む地雷、クラスター爆弾の残骸、その他の戦争残存爆発物(ERW)による死傷者が多数記録されました。記録された継続的に多い死傷者総数は、主に2015年以降に観察された紛争と対人地雷汚染の増加の結果です。

・2020年には、少なくとも7,073人の地雷/ ERWの死傷者が記録されました。2,492人が死亡、4,561人が負傷しましたが、20人の死傷者の生存状況は不明でした。

・2020年の合計は、2019年に記録された5,853人の死傷者から増加しており、年間に記録された最低合計数(2013年には3,456人)の2倍以上です。

・記録された対人地雷/ 戦争残存爆発物の死傷者の大多数は、判明した状況から民間人(80%)でした。

・2020年には、年齢がわかっているすべての民間人死傷者の半数を子どもが占めていました(1,872人)。

・前年同様に、2020年には、性別がわかっているすべての死傷者の大部分(85%)が男性および少年でした。


2020年中の死傷者は、54ヵ国およびその他の地域で確認され、そのうち38ヵ国は対人地雷禁止条約の締約国でした。

・非署名国のシリアは、ランドマインモニターが1999年に報告を開始して以来、初めてとなる一ヵ国による年間最多死傷者数を記録しました(2,729人)。

・2020年中に100人以上の死傷者が記録された締約国は、アフガニスタン、ブルキナファソ、コロンビア、イラク、マリ、ナイジェリア、ウクライナ、イエメンでした。
 
 

(対人地雷による汚染

2021年10月の時点で、少なくとも60ヵ国およびその他の地域が対人地雷によって汚染されています。これらには、対人地雷全面禁止条約第5条に基づいて対人地雷除去期限義務の履行を宣言した33締約国、および締約国ではない22ヵ国およびその他の5地域が含まれます。

・以前に対人地雷がないと宣言した3締約国は、その後の調査によって対人地雷による汚染があることを報告し、第5条に基づいて新しい対人地雷除去期限延長要求書を提出しました。ギニアビサウ、モーリタニア、ナイジェリアの3ヵ国です。

・さらに、4締約国(アルジェリア、クウェート、モザンビーク、ニカラグア)が残留対人地雷による汚染の疑いがあるか、すでに知られています。一方、5締約国は、即席地雷による汚染の疑いまたはすでに知られている汚染に関する情報を提供する必要があります(ブルキナファソ、カメルーン、マリ、チュニジア、およびベネズエラです)。
 

大規模な対人地雷汚染地域(ランドマインモニターによって100km2以上の地雷原と定義されています)のある国は、アフガニスタン、ボスニア・ヘルツェゴビナ(BiH)、カンボジア、クロアチア、エチオピア、イラク、トルコ、ウクライナ、イエメンの9締約国と報告されています。

・もし調査が実施されれば、これらの国の少なくとも2ヵ国(エチオピアとウクライナ)の汚染の程度はかなり少なくなる可能性があります。
 
 
 
(対人地雷の除去)
 
締約国は、2020年に少なくとも146km²の汚染された土地からの対人地雷除去と135,500個以上の対人地雷の破壊を報告しました。これに対し、2019年には156km²の土地からの除去と約122,000個の地雷が破壊されたと報告されていました。

・カンボジアとクロアチアは、2020年に最大の除去面積・個数を報告し、それぞれが45 km²以上の土地の対人地雷除去を報告し、合計15,000個を超える対人地雷を破壊しました。

・チリと英国(UK)は、2020年に地雷原の対人地雷除去の完了を宣言しました。アルゼンチンはフォークランド諸島/マルビナス諸島に対する主権の主張により、対人地雷の影響を受けていますが、まだ対人地雷除去の完了を認めていません。

・2020年、アフガニスタン、イラク、イエメンの3ヶ国すべてにおいて、紛争や不安が続いているにもかかわらず、地雷除去作業を続けました。

・2020年には、キプロス、エクアドル、モーリタニア、ペルー、セネガルの5締約国が対人地雷除去期限延長手続きを行っていないと報告しました。

・COVID-19の世界的大流行は、いくつかの締約国での地雷除去作業に弊害をもたらしました。アンゴラ、チャド、エチオピア、セルビア、南スーダン、ジンバブエにおいては、対人地雷除去作業の一時的な停止につながりました。


2021年10月の時点で、24締約国には遅くとも2025年以前までに第5条の対人地雷除去義務を履行する期限があり、7締約国は2025年以降に期限が来ます。

・キプロス、コンゴ民主共和国(DRC)、ギニアビサウ、モーリタニア、ナイジェリア、ソマリア、トルコの7か国が2021年の対人地雷除去期限の延長を要求しました。これは11月の第19回締約国会議で検討されます。これらの要求のいくつかには、対人地雷除去と調査のための年間予測を含む、経費に関する詳細な複数年の作業計画が欠落しています。

・エリトリアは、対人地雷除去期限延長申請を提出する予定でしたが、まだ提出していませんので、2020年12月に第5条の期限が切れて以来、条約に違反した状態のままです。

・クロアチア、オマーン、パレスチナ、南スーダン、スリランカ、タジキスタン、タイ、ジンバブエのみが、対人地雷除去期限を守るという目標を達成しているようです。対人地雷除去期限のある他の16締約国については、対人地雷除去面積の予測が目標を下回っているか、進捗状況が不明確です。

 
 
 
 (対人地雷被害回避教育)
 
2020年には、26締約国が、対人地雷汚染の影響を受けた人々に地雷被害回避教育を提供したことが知られています。

・15締約国は、特定の技術作業部会会議を通じて、または国連(UN)地雷対策下部組である地雷対策調整会議に参加することにより、地雷被害回避教育を調整するための機関を持っていました。

・2021年に対人地雷除去期限を延長する要求を提出した締約国はいずれも、地雷被害回避教育のためにかかる費用の詳細な複数年計画を立てていませんでした。
 

物理的な距離やその他の制限により、影響を受ける集団に到達し、対面集会などの行動の変化を促進するために通常行われる活動が制限されるため、地雷被害回避教育はCOVID-19世界的大流行の影響を大きく受けています。

・締約国および事業者は、マスメディア、携帯電話アプリ、SNSなどを通じて、地雷被害回避教育を提供するためのインターネット手法を実践、拡張することにより、変化する状況に適応しました。地域ボランティアによる地方組織も、地雷被害回避教育チームが活動できなかった期間、安全のための情報を提供し続けました。

 
 
 
 (対人地雷被害者支援)
 
 以下の調査結果は、かなりの数の地雷犠牲者を抱える34締約国に関連しています。

・2020年、これまで被害者支援の最も支援されていた部門であった医療およびリハビリテーション活動は、接近の難しさ、サービスの調整、資材供給などの面で、多くの国でますます多大な課題に直面しました。

・34締約国のうち14ヵ国のみが、認識された被害者の要求と支援の乖離に対処するための被害者支援または関連する障害計画を実施していました。少なくとも10締約国は、被害者支援の実施に関連する国家障害戦略案の改訂または採択を完了する必要があります。

・少なくとも22締約国が「積極的な」調整機関を持っていた一方で、生存者の代表はそれらの締約国の3分の2で調整過程に参加しました。しかし、彼らの意見が考慮され、それに基づいて国が行動したという証拠はほとんどありませんでした。

・生被害者の生計を得る機会が最も必要とされている多くの締約国において、生存者やその他の障害者の経済的機会への参加には健常者と比べ大きな乖離が残っています。
 

オスロ行動計画には、武力紛争、人道的緊急事態、自然災害などの危険のある状況での犠牲者の保護に関する取り組みが含まれています。この行動は、Covid-19の世界的大流行に関連した制限によって引き起こされた追加の制約に対処しながら、被害者支援を実施し続けるために特に重要になっています。



 (対人地雷対策への支援)
 
 援助資金供与者と対人地雷の影響を受けている国は、2020年中の対人地雷対策に対する国際的および国内的な支援の合計で6億4,350万米ドルを寄付しました。

援助資金供与者が提供する対人地雷対策に対する国際的な支援状況は、2019年の5億6,130万ドルと比較して、2020年には5億6,520万ドルでほぼ横ばいでました。

・資金の大部分はごく少数の援助資金供与者からのものであり、上位5援助資金供与者(米国、欧州連合(EU)、ドイツ、日本、ノルウェー)が2020年の国際援助資金の75%(4億2,610万ドル)を占めています。

・イラク、ラオス、アフガニスタン、コロンビア、クロアチアの受け取り器楽上位5ヵ国は、合計2億5,280万ドルを受け取りました。これは、全国際支援金額の45%に相当します。

・国際的な支援資金は、対人地雷除去と地雷被害回避教育(全資金の68%)、被害者支援(6%)、能力開発(4%)、政策提言(1%)の分野に分配されました。残りの21%は、援助資金供与者によって分配されなかったか、あるいは分配されませんでした。

・2020年、COVID-19の世界的大流行により、援助資金供与者からの柔軟性と応答性が向上し、可能な限りにおいて資金運用が継続できるようになりました。

ランドマインモニターは、2020年に対人地雷被害国が自国の地雷対策プログラムに合計7,830万ドルの国家支援金を提供したと報告し、対人地雷の影響を受けた14ヵ国を特定しました。アンゴラ、BiH、カンボジア、コロンビア、クロアチア、ラオス、レバノン、ニジェール、ペルー、セルビア、スーダン、タジキスタン、タイ、トルコです。

 


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