ICBL関連 2019

ICBL ランドマインモニター関連

 

 
ランドマイン・モニター 2019 主な調査結果
 

 【主な注目点】

 地雷禁止キャンペーンの大成功は、人道的軍縮と呼ばれるまったく新しいアプローチにつながりました。これは市民社会が率先するものであり、今までに4つの国際条約成立の主導権を握り、2つのノーベル平和賞を受賞しています。

 ランドマインモニター2019は、過去20年の見直しと第21年次の出版物であり、地雷のない世界への容赦ない進歩を監視し続けています。世界は地雷問題を恥とする意識を依然として強く持ち続けています。

 ランドマインモニター2019の報告期間中に新たに条約に参加した国はありませんが、164か国が対人地雷全面禁止条約の条項に拘束されており、各条項を忠実に実施しています。33カ国は依然として条約に参加していませんが、それにも関わらず、条約の主要な条項を守っています。

 少数の非国家武装勢力(NSAG)のみが、しばしば即席地雷の形で対人地雷全面禁止条約において禁止されている地雷を使用しています。またこのような地雷の使用は2018年にも多くの犠牲者を出していますが、犠牲者の大半は民間人であり、その半数以上は子どもでした。

 各国が地雷で汚染された土地からの地雷除去に取り組んでいるので、ランドマインモニターは、地雷生存者および彼らが属している集団が必要としていることを支援することも含め、多くの必要なことを特定しています。

 ICBLに参加している国もその他の国も、地雷撤去およびその他の地雷対策活動に多大な資源を提供しており、この世界初の人道的軍縮条約が20年以上経った今日でも引き続きその影響力を持っていることが確認できます。
 



 
(条約の状況)

 対人地雷全面禁止条約には164の締約国があります。マーシャル諸島は、署名だけしてまだ条約を批准していない最後の国です。

•最近条約に参加した国は、2017年12月のスリランカとパレスチナでした。
 
 

  (対人地雷の使用)

 2018年半ばから2019年10月にかけて、ランドマインモニターは、ある国の政府軍による対人地雷の新たな使用を確認しました。その国ミャンマーは、対人地雷全面禁止条約の締約国ではありません。

 非国家武装勢力は、ランドマインモニター報告期間中にアフガニスタン、インド、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、イエメンの少なくとも6か国で対人地雷を使用しました。


•カメルーン、コロンビア、マリ、リビア、フィリピン、ソマリア、チュニジアで、まだ確認に至っていないまでも、非国家武装勢力による新たな対人地雷使用の申し立てがありました。

 
 
(犠牲者)
 
 2018年は、対人地雷(また即席地雷とも呼ばれるものも含みます)、クラスター爆弾残骸、およびその他の戦争残存爆発物として機能する即席型を含む、地雷および戦争残存爆発物によって4年連続で例外的に非常に多くの犠牲者が記録された1年でした。


・ランドマインモニターは2018年中に6,897人が地雷/ 戦争残存爆発物で死亡または負傷したことを記録しました。内訳は、3,059人が死亡、3,837人が負傷、1人の犠牲者の生存状況は不明でした。

・継続的に高い犠牲者数は、武力紛争と大規模な暴力に直面している国、特にアフガニスタン、マリ、ミャンマー、ナイジェリア、シリア、ウクライナで記録された犠牲者の影響を受けての物です。ただし、戦闘が活発に行われている地域での正確なデータ収集は依然として困難な状況が続いています。

・2018年の犠牲者合計数は、過去3年間のいずれの犠牲者数よりも少なかったのですが、2013年に判明した年間最少の3,457人の犠牲者のほぼ2倍もありました。

・2018年も3年連続で、年間の犠牲者の最大数は、即席地雷によるものです(3,789人)。これは、これまでに記録された中で最も多い即席地雷による犠牲者数でもありました。


2018年の死傷者は50カ国とその他の国として認められていない地域で確認されましたが、そのうち32カ国は対人地雷全面禁止条約の締約国であり、その他の国として認められていない3地域でも確認されました。


・記録された地雷/戦争残存爆発物による死傷者の大半は一般市民(71%)であり、その状況はこれまでにも知られていましたが、近年その比率がわずかに低下しています。

・2018年には、年齢が判明している民間人の死傷者の54%を子どもが占め、2017年の年間合計の数字から7ポイント増加し、2016年の数字よりも12ポイント増加しました。

・過去数年と同様、2018年の性別が判明している子どもの死傷者の大半は男子でした(84%)。

・ランドマインモニターは、1999年に始まった全地球規模追跡調査の開始以来、約90,000人の生存者を含む130,000人以上の地雷/戦争残存爆発物の犠牲者を記録しています。


 
    (地雷対策への支援)


 寄付国と地雷被害の影響を受けた国は、2018年の地雷対策に対する国際的および国内的な支援を合わせて約6億9,950万米ドルを寄付し、2017年と比較して9,510万ドル(12%)減少しました。

・これは、1996年まで遡ったランドマインモニターの資料でこれまでに報告された国際的および国内的な地雷対策資金のうち2番目に高い合計金額を表しています。

2018年には、43の国とその他の3地域での地雷活動に国際的な寄付者が6億4,260万ドルを寄付しましたが、その金額は2017年と比較して5,370万ドル(8%)減少しました。

・これにより、2016年と2017年に観測された2年間の持続的な寄付金額の伸びは終了しましたが、ランドマインモニターによって記録された中では2番目に高い水準の国際支援が引き続いていることを表しています。

・合衆国(米国)、欧州連合(EU)、連合王国(英国)、ノルウェー、およびドイツの上位5つの地雷対策寄付者は、合計4億5,810万ドルで、全国際支援の71%を寄付しました。

・5カ国(イラク、アフガニスタン、シリア、クロアチア、ラオス)での地雷対策が、3億5120万ドル、つまり2018年のすべての国際支援の55%を受け取りました。

・17カ国での被害者支援および全世界的な活動に対する国際支援は、2017年の2,770万ドルに対して、2018年には合計4,470万ドルでした。


○これは、1700万ドル(61%)の実質増を表していますが、提供されたすべての国際支援の比率は、2013年以降に観測された4〜7%の範囲の上限近くに留まります。

○すべての犠牲者支援の半分は、イラク、アフガニスタン、イエメン、シリアの4か国のみに送られました。一方、他のほとんどの受取国では継続的な減少が記録されました(被害者支援資金の17カ国の受取国のうち9カ国は、2017年と比較して2018年に受け取った支援金額が少なかったのです)。

○被害者支援に充てることを条件にした寄付者からの支援は追跡が困難であり、寄付者による国際支援の配分に関する報告の改善が依然として必要でした。


 ランドマインモニターは、自国の地雷対策計画に対して5,690万ドルの支援を提供したと報告した地雷被害のある8カ国のみを特定することができましたが、その金額は2017年と比較して4,140万ドル(42%)減少していました。
 


(対人地雷による汚染と除去)

 2019年10月現在、60カ国およびその他の地域が対人地雷で汚染されています。2018年からの変更はありません。


・これには、対人地雷禁止条約の34の締約国、締約国ではない22カ国、およびその他4地域が含まれます。

・2018年に対人地雷除去を完了した締約国はありません。

・すでに第5条の完了を宣言している、または管轄権または管理下で汚染を宣言していない6か国の締約国は、現在、残存汚染地域を有しているか、または有すると疑われています。アルジェリアとブルンジは、残存汚染地域を有していることを宣言し、1年以内に発見された地雷を破壊したため、対人地雷全面禁止条約に準拠しています。ジブチ、クウェート、モルドバ、ナミビアはすべて地雷に汚染されている疑いがありますが、正式な宣言はしていません。

・2018年には、アフガニスタン、ナイジェリア、イエメンの締約国で対人地雷の新たな使用が報告されました。

・大量の対人地雷汚染(ICBL-CMCにより100 km2以上と定義)は、締約国であるアフガニスタン、アンゴラ、ボスニア・ヘルツェゴビナ(BiH)、カンボジア、チャド、クロアチア、イラク、タイ、トルコ、イエメンに存在すると考えられています。締約国ではないアゼルバイジャンと、その他地域である西サハラも、広範囲が地雷に汚染されていると考えられています。


 2018年には少なくとも140km²の土地の地雷除去完了が報告されましたが、2017年に推定された除去面積の195km²から減少しました。


・過去5年間(2014〜2018年)、締約国間の地雷の総除去面積は約800km²と推定され、少なくとも661,491個の地雷が破壊されました。

・2018年の地雷汚染地域の最大総除去面積はクロアチアで達成され、カンボジアとアフガニスタンがそれに続き、記録された地雷除去面積の80%以上を占めました。過去5年間で、アフガニスタン、カンボジア、クロアチア、およびイラクは、締約国によって除去されたすべての土地のうち83%以上を除去しました。

・2018年中、アフガニスタン、イラク、イエメンでは、紛争が継続し、安全性が確保されていないにもかかわらず、地雷除去を続けました。

・過去5年間、締約国は非技術的および技術的調査を使用して大量の土地を解放してきたため、残留汚染地域別の推定面積が大幅に減少しました。アンゴラとクロアチアは、以前に地雷汚染が疑われていた土地の90%を安全としました。カンボジア、南スーダン、スリランカ、タイ、およびジンバブエでも、非技術的および技術的調査を効果的に利用して対人地雷の埋設が疑われていた危険地域の安全宣言をしています。


 1999年に地雷禁止条約が発効してから、30の締約国、締約国ではない1カ国、および1つのその他地域が、領土内のすべての地雷埋設地域の除去を完了しました。


・過去5年間(2014〜2018年)、5締約国が地雷のないことを宣言しました。2017年にアルジェリア。 2014年のブルンジ。 2017年のモーリタニア; 2014年のモンテネグロ。 2017年にはモザンビーク。2018年には対人地雷の汚染が無くなったと宣言した国はありませんでした。

・2019年10月現在、28の締約国は、2025年までに、第5条の義務(訳注 10年以内に地雷敷設地域における対人地雷 を破棄する)を満たす期限が存在します。また、4締約国は2025年以降の除去期限です。クロアチアが2026年、イラクが2028年、パレスチナが2028年、スリランカも2028年です。

・イエメン(現在の期限2023)とボスニア・ヘルチェゴビナ(現在の期限2021年3月)は両国とも、彼らが残存する汚染地域をより正確に特定できるように暫定的な延長を要求しています。イエメンは2022年3月までに、またボスニア・ヘルチェゴビナ2020年3月までにそれぞれ追加の延長申請を提出する予定です。

・2019年にはアルゼンチン、カンボジア、チャド、エチオピア、タジキスタン、イエメンの6カ国が第5条の義務の延長を要請しました。

・エリトリアは、2020年2月1日までに第5条の義務を果たす期限がありますが、まだ延長申請書を提出しておらず、2014年以降第7条による透明性報告書を提出していません。

・ジンバブエ、スリランカ、コンゴ民主共和国(DRC)、ペルーは、第5条の期限の義務を果たす可能性が高まっています。チリ、エクアドル、ヨルダン、ニジェール、セネガル、セルビア、タジキスタン、および連合王国(英国)が2025年までに地雷除去を完了することも可能です。

 
 
 (被害者支援


 2018年から2019年の間、継続的な努力があったにもかかわらず、多数の地雷被害者との地雷禁止条約のほとんどの締約国は、2014年から2019年の間に実施すべくマプト行動計画で行った約束を果たすための適切な資源と行動を欠いていました。以下の調査結果は、かなりの数の地雷犠牲者を抱える33の締約国に関するものです。最新の締約国パレスチナとスリランカも含め、被害者を支援する必要性は依然として大きいものがあります。

・ほとんどの締約国では、生存者の健康と身体のリハビリテーション計画の質と量を改善するためにいくつかの取り組みが行われました。

・それでも、近年の援助資源の削減に続いて、多くの国では、地雷/戦争残像爆発物の被害者に対する中核的な支援サービスがほぼ停滞していることがわかりました。また、生存者ネットワークは資源の減少に直面したため、運用を維持するのに苦労しました。

・支援サービスはほぼ都市部に集中化されたままであり、遠隔地や農村部に住んでいる多くの地雷/戦争残像爆発物の生存者がこれらのサービスを利用しにくい状況です。原材料と財源の不足が、いくつかの国における物理的リハビリテーション部門の改善に対する障害でした。

・33の締約国のうちたった14カ国のみが、支援の現場で認識されている必要性と実際の隔たりに対処するために、被害者支援または関連する障害計画を実施していました。

・締約国の約3分の2には積極的な調整メカニズムがあり、生存者の代表者は21締約国間で行われた18の調整プロセスに参加しました。地雷被害者の社会参加の増加に向けた能力構築のための国家の取り組みは、ほとんど報告されていません。

・対人地雷被害者が生計を維持するためには機会の創出が最も必要だと指摘されてきた締約国の多くで、地雷被害者が雇用、訓練、その他の所得創出支援活動に参加するには現実との大きな隔たりがあります。
 
 
 
(備蓄地雷の破壊)

 対人地雷全面禁止条約の締約国は、2018年に破壊された140万個を含む、5500万個以上の備蓄対人地雷を破壊しました。

・オマーンは、2018年9月に地雷備蓄の破壊を完了しました。

・ギリシャとウクライナは、備蓄の破壊を完了するための期限を申請して一旦は伸ばしたものの、連続して期限までの達成できなかったため、条約に違反したままです。

・ウクライナ(350万個)、ギリシャ(643,267個)、スリランカ(77,865個)の3つの締約国には、破壊されるべき対人地雷が400万個以上残っています。

 1999年当時には、すべての国(条約の署名国と非署名国の両方)が合計約1億6千万個の対人地雷を備蓄していました。今日、備蓄された対人地雷の世界的な合計数は5000万個未満になっている可能性があります。

 
 
(生産と譲渡)
 
 
 対人地雷全面禁止条約の締約国ではないエジプト、イスラエル、ネパール、米国など、41カ国が対人地雷の生産を停止しています。

・中国、キューバ、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、ベトナムは、将来の生産をまだ否定していないため、ランドマインモニターはこれら11カ国を地雷生産国としてリストに上げています。この地雷生産国リストは、以前のレポートから変更されていません。

・過去1年間に最も積極的に生産する可能性が高かったのは、インド、ミャンマー、パキスタンでした。

・非国家武装勢力は、ランドマインモニター2019の報告期間中にアフガニスタン、コロンビア、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、チュニジア、イエメンで即席地雷を生産しました。

・2018年および2019年初頭、フーシ派勢力は、被害者が活性化させるIED(即席地雷)を含む地雷の「大量生産」をイエメン国内で強いていました。


 ランドマインモニターは、過去20年にわたって対人地雷の国から国への移転の証拠を発見していません。中国、インド、イスラエル、カザフスタン、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、米国の少なくとも9カ国の非締約国が、対人地雷の輸出に関しては正式に一時停止しています。


 
(対人地雷全面禁止条約推進国連総会決議の投票)
 
 
 対人地雷禁止条約推進国連総会(UNGA)決議73/61は2018年12月に169カ国の賛成、反対なし、16カ国の棄権で採択されました。


・これは、2017年の決議(167カ国が賛成)から賛成票がわずかに増加したものであり、これまでに記録された中で棄権の数が最小となっています。
 

キューバ、エジプト、インド、イラン、イスラエル、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、韓国、シリア、アメリカ、 ウズベキスタン、ベトナムの対人地雷全面禁止条約に不参加の中核である14カ国のみが連続して対人地雷全面禁止条約決議を棄権しており、そのほとんどは1997年以降ずっと棄権しています。


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