ICBL関連 2018

ICBL ランドマインモニター関連

 

 
ランドマイン・モニター 2018 主な調査結果
 

 【主な注目点】

 「ランドマインモニター2018」は地雷監視のための年次出版物で、その中で地雷のない世界への進捗状況が検証されていますが、対人地雷全面禁止条約に参加している政府は顕著な成果を収めてきています。2017年末に新たに2カ国がこの条約に参加したことで、164カ国が条約の規定に拘束されることとなり、条項が確実に履行されています。しかし、地雷による傷跡は依然として各国に深く残っています。
 
 少数の非国家武装勢力だけが条約で禁止された武器である対人地雷(多くの場合、即席地雷ですが)を使用しています。それらによって2017年にもまた多数の死傷者を出しましたが、大多数は民間人で、そのうち半数近くが子供たちでした。
 
 地雷に汚染された国々が地雷除去を続けている中、ランドマインモニターは地雷生存者とそのコミュニティの必要としている支援を含め、やるべきことの多くを明らかにしています。
 
 対人地雷全面禁止条約に参加している国々および参加していない国々も、地雷除去やその他の地雷対策活動に記録的に高額な資金を提供しており、この世界初の人道的軍縮条約が20年後の今も続いている効力の強さが認められます。

 



 
(条約の状況)

 対人地雷全面禁止条約には現在164の締約国があり、1署名国(マーシャル諸島)がまだ批准していません。
 
 ・ 2017年12月に2カ国が新たに条約に参加しました。具体的には、スリランカが12月13日に参加し、パレスチナは12月29日に参加しました。
 
 
 

  (対人地雷の使用)

 2017年10月から2018年10月まで、ランドマインモニターは、対人地雷全面禁止条約の締約国ではない1カ国のみ(ミャンマー)の政府軍による新たな対人地雷の使用を確認しました。 • 報告期間中に締約国が条約で規定する対人地雷を使用したという申し立てはありませんでした。
 
 
 •  ランドマインモニターは、この報告期間中、シリア政府軍による対人地雷の使用を文書による報告で受けていませんし、確認もしていません。
 
 非国家武装勢力(Non-State Armed Groups=NSAGs)は、アフガニスタン、コロンビア、インド、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、タイ、イエメンの少なくとも8カ国で対人地雷を使用しました。
 
 
 •  ISの軍隊はイラクとシリアで即席地雷を使用し続けた可能性が高いのですが、個人の記者が被災地に入ることができないため、報告期間中に新たな使用を確認することは困難でした。
 
 •  ランドマインモニターは、報告期間中にカメルーン、イラク、マリ、リビア、フィリピン、チュニジア、およびウクライナの非国家武装勢力による対人地雷の新たな使用の申し立てを確認できませんでした。
 
 

(死傷者)
 
 
 2017年は、対人地雷として機能する即席型爆発物(即席地雷とも呼ばれる)、クラスター爆弾の不発弾、その他の戦争残存爆発物を含む、地雷や戦争残存爆発物(ERW)によって非常に多くの死傷者数が記録された3年連続の年(訳注 2017年は7,239人、2016年は8,605人、2015年は6,461人)でした。
 
 
 •  2017年中に、ランドマインモニターは地雷/戦争残存爆発物によって7,239人の死傷者を記録しました。その内訳は、2,793人が死亡、4,431人が負傷、15人の生死が不明というものでした。
 
 
 •  死傷者の総数が継続的に増加した原因は、武力紛争や大規模な暴力に直面している国々、特にアフガニスタンやシリア、そしてウクライナ、イラク、パキスタン、ナイジェリア、ミャンマー、リビア、イエメンなどで記録された死傷者の影響を受けたからです。しかしながら、今なお激しい紛争が続いているため、正確な死傷者の数を収集することは依然として困難です。
 
 
 •  2017年の死傷者数は、1999年以降ランドマインモニターに記録されてきた年間死傷者数の最大を記録した2016年の死者数から減少しました。しかし、2017年の死傷者合計数は過去5年前の平均年間死傷者数をはるかに上回りました。
 
 
 
 •  2年連続で、ランドマインモニター史上最高の死傷者を記録したのですが、その中で、即席地雷による年間死傷者数は2,716人、そして子供の死傷者数は2,452人でした。
 
 
 2017年の死傷者は49カ国で確認され、そのうち35カ国は対人地雷全面禁止条約の締約国であり、その他(国家ではない)4地域でも死傷者が確認されています。
 
 
 •  記録された地雷/戦争残存爆発物の死傷者の大多数は、その身分が判明した民間人であり、87%を占めます。この比率は最近数年間の割合よりも高いものです。
 
 
 
 •  2017年には、年齢がわかっていたすべての民間人死傷者の47%を子供が占めました。これは、2016年の年間合計数値から5ポイント増加した数字です。
 
 
 
 •  性別が判明している場合、女性と女児が全体の13%を占めました。
 
 
 
 •  ランドマインモニターは1999年に世界各国で追跡調査を始めて以来、122,000人以上の対人地雷/戦争残存爆発物による死傷者を記録していますが、この数の中には約86,000人の生存者が含まれています。
 
 
 
 
    (地雷対策への支援)

 2017年に援助資金提供国および地雷被災国は、地雷対策のために合計で約7億7,150万ドルを拠出しましたが、この金額は2016年と比較して2億3,060万ドル(36%)の増加です。


 •  この金額は、1996年まで遡っても、これまでにランドマインモニターで記録された国際的および国内の地雷対策援助資金総額の中で最高額です。

 2017年には、38の国と他の3つの地域から国際的な資金提供者により地雷対策のために6億7,320万ドルが支援されましたが、この金額は2016年と比較して1億930万ドル(39%)の増加となりました。


 •  この金額は、これまでにランドマインモニターに記録された最高レベルの国際的支援金額です。


 • アメリカ(合衆国)、ドイツ、欧州連合(EU)、ノルウェー、日本の5ヶ国の地雷対策資金援助国が、国際支援金額の79%を支援しています。


 •  過去最高となった2017年の支援金合計額は、主に米国(合計3億9,000万ドル、前年から1億5,660万ドルの増加)およびドイツ(合計8,440万ドル、前年から4,710万ドルの増加)の支援金の大幅な増加によるものです。


 •  2017年には、イラク、シリア、コロンビア、アフガニスタン、ラオスの5ヶ国が地雷対策活動のために4億3540万ドル、つまり国際支援金額全体の65%を受け取りました。


 •  最大の増加は、イラクとシリアの地雷対策活動に対するもので、2016年よりもそれぞれ1億2,000万ドル(合計2億7,000万ドル)および7,080万ドル(合計8,940万ドル)多く受け取りました。


 •  一方で、支援国が被害者の支援に明確に捧げている支援金額は依然として少ないままで、成果の追跡が困難でもあるため、2017年に確認できたのは国際的支援金額のわずか2%にすぎません。

 対人地雷によって影響を受けている10カ国は、自国の地雷対策計画に対する国家支援として9,830万ドルを拠出しましたが、この金額は2016年と比べて1330万ドル(16%)増加したと報告されています。




(対人地雷による汚染と除去)

 2018年11月現在、60の国と地域が対人地雷によって汚染されています。
 
 ・ これには、対人地雷禁止条約の締約国である34カ国、締約国ではない22カ国、その他の4地域が含まれます。
 
 
 ・ モーリタニアは2017年12月に除去を完了しました。モザンビークは2015年に除去完了を宣言したのですが、その後2016年および2017年にこれまで未確認だった対人地雷の汚染地域が発見されたため、2017年5月に改めて除去の完了を宣言しました。
 
 
 •   対人地雷の大量汚染(国全体で合計100㎢以上)地域は、アフガニスタン、アンゴラ、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ(BiH)、カンボジア、チャド、クロアチア、イラク、タイ、トルコ、イエメン、およびその他地域では西サハラに存在すると考えられています。
 
 2017年には約128 ㎢の土地から地雷が除去されたと報告されましたが、これは2016年に報告された除去面積合計の145 ㎢よりも少ないものです。
 
 
 •  2017年には、168,000個以上の対人地雷と約7,500個の対車両地雷が破壊されました。この数字は、2016年の結果から大幅に減少したことを表しています(訳注 2016年には232,000個の対人地雷、29,000個の対車両地雷が破壊されました)。ただし、一部に除去結果を体系的に報告していない国もあるため、この数字は過小評価されたものです。
 
 
 •  2017年には、対人地雷によって汚染された国および地域の3分の2、すなわち29の締約国、8の非締約国、およびその他の3地域で除去の実績が報告されました。
 
 
 •  2017年の最大の地雷原除去は、アフガニスタン、クロアチア、イラク、カンボジア(2016年と同じ国です)で達成され、これらの国々の除去の合計除去記録は全体の80%以上を占めています。
 
 
 •  2017年には、アンゴラ、カンボジア、タイの3カ国の締約国が非技術的・技術的調査を実施して、従前から地雷によって汚染されていると予想されていた土地のかなりの広さ(30km2以上)を減少させました。
 
 •  過去5年間(2013年〜2017年)の間に、約832㎢の地雷が埋設された土地の除去が完了しました。地雷は過去の戦闘区域にあるという観点から除去作業にあたり、約110万個の対人地雷と66,000個以上の対車両地雷が破壊されました。
 
 1999年に対人地雷禁止条約が発効して以来、29締約国、1非締約国、および1その他地域が、領土内の地雷が埋設された地域すべての除去を完了させました。
 
 
 •  対人地雷汚染地域が新たに発見されたヨルダンとナイジェリアは、第5条(訳注 地雷敷設地域における対人地雷の廃棄 参加後10年以内)に基づく義務を負っていることを宣言し、新たな地雷除去完了期限の設定を要求すべきです。
 
 
 •  2017年の第16回締約国会議では、アンゴラ、エクアドル、イラク、タイ、ジンバブエの5カ国の締約国地雷除去期限が延長されました。 2018年11月の第17回締約国会議では、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、キプロス、セルビア、スーダン、ウクライナ、イギリスの7締約国が除去期限の延長承認を要請しました。
 
 
 •  条約で定められている除去期限を守るために順調に除去作業が進んでいる締約国はコンゴ民主共和国、ペルー、スリランカ、ジンバブエの4ヶ国のみです。
 
 
 •  2014年の対人地雷全面禁止条約第3回再検討会議で採択された政治宣言には、条約参加国は最大限2025年までに可能な限り条約で定められた義務を全うするという公約が含まれています。
 
 ほとんどの参加国が条約第5条によって定められた除去期限を守られそうにないのですが、十分な資金と責任を持ち、そして治安状況が許す限り、2025年の除去目標に到達すべきです。
 
 
 •  対人地雷汚染地域のあるほぼすべての締約国には、条約による国の除去義務を果たすための国家対人地雷行動計画あるいは同様の制度を持っています。しかし、それとはまったく対照的に、地雷汚染地域を持つ非締約国の場合、半数以下しか実際に機能する地雷対策計画を持っていません。
 
 
 
 
 (犠牲者支援

 2017年から2018年にかけて、多数の対人地雷被害者を擁する対人地雷全面禁止条約締約国の大部分は、2014年から2019年に渡るマプト行動計画の約束を果たすための適切な資金と行動を欠いていました。以下の調査結果は、相当数の地雷犠牲者を有する33の締約国に関するものです。最新の締約国であるパレスチナやスリランカを含め、地雷犠牲者を支援する必要性は依然として高いのです。
 
 
 •  ほとんどの締約国では、地雷生存者のための健康と身体のリハビリテーション計画の質と量を改善するためのいくつもの努力が払われてきました。
 
 
 ・ それにもかかわらず、近年の資金の減少のため、多くの国で対人地雷/戦争残存爆発物の犠牲者に対する未実施の中核的支援サービスにほぼ停滞が見られました。地雷生存者ネットワークもまた、資金の減少に直面したため、運用を維持するのに苦労しました。
 
 
 •  サービスは大部分が都市部で集中管理されており、遠隔地や農村部に住んでいる多くの対人地雷/戦争残存爆発物の生存者がこれらのサービスを利用することは困難です。また、原材料や財源の不足は、いくつかの国の身体リハビリテーション部門の改善にとって障害となっています。
 
 
 •  わかってきた生存者の必要とする援助の内容と、実際に行われている援助の隔たりに対処するため、被害者の援助または関連する障害計画を実施していたのは、33の締約国のうちわずか14ヶ国だけでした。
 
 
 •  締約国の約3分の2が活発な調整メカニズムを持ち、地雷生存者の代表は21の締約国のうち18ヶ国で調整プロセスに参加しました。しかし、地雷犠牲者の社会参加を増やすための能力開発をする新たな国の取り組みはほとんど報告されていません。
 
 
 •  地雷犠牲者が生計手段を得る機会こそが最も必要とされている多くの締約国において、雇用、訓練、その他の収入を生み出す支援活動を彼らが利用することは明らかに困難な状況です。
 
 
 
 
(備蓄地雷の破壊、地雷の生産および譲渡)

 
 対人地雷全面禁止条約の締約国では、2017年中に破壊された50万個以上を含め、これまでに5,400万個以上の備蓄された対人地雷を破壊してきました。
 
 
 •  ギリシャとウクライナは今も条約違反のままであり、4年間で備蓄地雷を完全に破壊するという期限を守っていません。
 
 
 •  この2つの締約国が、破壊すべき500万個以上の対人地雷を保有しています。ウクライナが440万個、ギリシャが643,267個保有しています。オマーンは7,630個の保有地雷を2019年2月までに破壊する計画です。
 
 1999年には、すべての国(条約署名国と非署名国の両方)で、総計約1億6,000万人の対人地雷を備蓄していましたが、今日では世界全体の備蓄総計は5,000万個未満になっているかもしれません。
 
 対人地雷全面禁止条約の締約国ではないエジプト、イスラエル、ネパール、米国の4国を含む、41国が対人地雷の生産を中止しました。
 
 
 •  中国、キューバ、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、ベトナムの11カ国が、ランドマインモニターで地雷生産国として挙げられています。なぜなら、これらの国々は将来において対人地雷の生産をしないと一旦は表明したにも関わらず、報告に変化がないからです。
 
 
 •  これらの国々の中で、今も積極的に対人地雷を生産している可能性が最も高いのは、インド、ミャンマー、パキスタン、韓国です。
 
 
 • 一方、非国家武装勢力はアフガニスタン、イラク、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、シリア、イエメンで即席地雷を生産しています。その中でも、イエメンのフーシ派は、犠牲者によって活性化するIED(即席地雷)を含む、対人地雷を大量生産しています。
 
 
 中国、インド、イスラエル、カザフスタン、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、米国の少なくとも9カ国の対人地雷全面禁止条約非締約国が、対人地雷の輸出の一時停止を公式に表明しています



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