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定期講演会記録6

6回 中部地雷問題支援ネットワーク講演会
アフガニスタンの地雷問題

開催日時  平成14年2月3日(土) 午後2時~4時30分

開催場所  名古屋国際センター 第二会議室

講  師  北川泰弘さんJCBL(地雷廃絶日本キャンペーン)代表
参加者   20名

 
 JCBLの北川です。本来なら今アフガニスタンに出張している、清水俊弘さんが受け持つべき講座かも知れませんが、今彼はアフガニスタンでとても忙しく支援活動をしていますので、代わりに私がお話する次第です。
ここに中日新聞の日曜版があります。これでアフガニスタンの位置が分かります。つまりパキスタンとイランに挟まれ上はウズベキスタンという関係です。アフガニスタン内部を見ますと、有名なカンダハールがこのあたりにあります。タリバンの巣窟だったところです。カンダハールの読み方を変えるとガンダーラということになります。有名な孫悟空と三蔵法師の一行の旅はヒマラヤを通ってカンダハールを経由してインドに行ったそうです。さてご承知とは思いますが、昔は仏像というものはありませんでした。仏様を彫刻にするなどとは恐れ多いことだったのです。ただ、何か拝む物が欲しいと言うことで仏足跡があっただけでした。ところが、後にギリシャの彫刻の影響が出てきまして、2~3世紀にガンダーラでギリシャ彫刻の技術をもって仏像を彫るという事が始まりました。日本の仏像彫刻の源流はガンダーラ美術と言えます。(以下写真を掲示しての説明)
ご説明いたしました様に、アフガニスタンは日本にとって全く縁が無い国と言うわけではありませんでした。アフガニスタンの情勢が変化したのは、1960年代に時の王様を追い出して共和国を作ろうとしたのですが、それがうまくいかなくてごたごたしている所にソビエトが入って来た訳です。1979年から1989年までソビエトによる占領が続いたのですが、抵抗勢力はずっとあった訳です。ソビエトが出ていった後に抵抗勢力(北部同盟)が国内を統一するかに見えたのですが、また内紛が始まり、結局タリバンの勢力が抵抗勢力を首都から追い出し1996年からタリバン政府が出来ました。タリバンはご承知の様に女性の教育の機会を奪ったり、非常に禁欲的な政治をしてきたのですが、2000年9月11日の同時多発テロをきっかけにアメリカが攻撃を開始し、倒した訳です。アフガニスタンの問題はいろいろ議論されているところで、一言で言うわけには行きません。


 今回は「復興会議」についてお話します。今年、2002年1月の21日~22日に閣僚会議があったのですが、先だってNGO会議と言うのが12月11日~12日にあったのです。これを主催したのが日本プラットフォームというNGOだったのです。ここに日本プラットフォームの用意した会議のレジュメがあります。アフガニスタンから27人のNGO代表を招いて、日本のNGO、政府も一緒になって1月に開かれる閣僚会議にどういう事を要求しようかと議論して出来たのがこのアピールです。しかしながら、ご承知のように当初、日本プラットフォームは閣僚会議に出席を許されませんでした。最終的に出席は許可されましたが、発言は許可されずレジュメも提出されなかったと思われます。復興会議について言いますと、10年くらい前にもカンボジア復興会議というのが同様に東京で開催されました。その時出席した人によると、その時はNGOが選んだNGOの代表が閣僚会議に出席して意見を述べる事が出来たそうですが、今回は外務省が選んだNGOの代表が閣僚会議に出席したのですが、NGOが選んだNGOの代表は閣僚会議に出席出来なかった訳です。表向きにはNGOの意見を聞いてNGOと一緒に復興支援をやろうとなっていますが、現実には後退した状況だと言えます。


 お手元に英語のNGOアピールを用意しましたのでそれの肝心なところだけご説明いたします。まず、最後のページを見ていただくと、既に地雷除去の終わった地域の面積が224平方キロメートル、優先度の高い地域が344平方キロメートル優先度の低い地域も379平方キロメートルあると言うことです。そして、優先度の高い地域の地雷除去に7年から10年かかるということです。
 次のページに移りまして、ここでは9月11日以前にあった地雷除去のための自動車や除去機材の80%が壊されたり盗まれたりしたと報告しています。タリバンは逃走用にトラックが必要になって地雷除去に使っていたトラックを盗んだ訳です。通信機器も同様です。そして報告はこれらを補填するのに1,700万ドル必要だとしています。これは円に換算すると20億円です。
 それから(2)にアメリカ軍の空爆による不発弾について書かれています。つまり、爆弾の10%から30%が不発弾として残っていると報告している訳です。これは地雷問題に追加してアメリカの攻撃後は不発弾の問題が出てきたということなのです。
 (3)にLong termとあります。これは、こういう状況に対して援助をしてもらいたいのだけれど、その援助は3年から5年は継続して約束して欲しいという事なのです。それはどういうことかと申しますと、まず、日本の援助には有償援助と無償援助があります。有償援助は「円借款」と呼ばれています。これには5年計画とか10年計画があります。一方無償援助は、あげたお金は返さなくて良いですよ、というものですが、単年度主義といいますか。一年こっきりしか約束できないのです。来年の支援はその国の来年の予算次第ですから、約束出来ないわけで、各国とも無償援助は単年度主義なのです。それで今年は援助してもらえても来年以降援助して貰う約束はないのです。そういう事情があるので、ここでは援助はして貰いたいが長期に約束して欲しいと言うわけです。そうでなければ地雷を除去して国を再建する計画が立てられないと訴えているのです。(3)の一番下の方に5億ドルから6億ドルと書いてありますが、アフガニスタンから地雷を除去するのにこれくらい費用がかかるという事です。円で言うと650億円から780億円くらいです。
 もう少し別の箇所で大事な所を見てみますと、次のページの(6)の上から3行目にCommunity based demining とあります。これは外国から来た人が地雷除去をするのではなくて、その国の人がその地方に根ざした地雷除去をやらして下さいと言っている訳です。外国からやってきて地雷除去をして終わったら帰ってしまうのでなく、地元の人に地雷除去の技術を教えて、外国人が帰った後も地雷除去が出来るようにして貰いたいと言うことなのです。
 (7)はLandmine victim、つまり地雷の犠牲者です。犠牲者の援助に力を注いで下さいという事です。地雷で被害を受けた人の50パーセントは病院にも行けないでいると言うことです。
 最後に、appendixと言うところがあります。アフガニスタン全体の地雷除去の指揮をしているのがMine Action Program for Afghanistan(MAPA) です。ここがアフガニスタンの地雷除去プログラムを作っているのです。後に出てくる Mine Action Center for Afghanistan(MACA)と各地域のRegional Mine Action Center(RMAC)と(MAPA)が協力してアフガニスタンの地雷除去を進めています。
本文にも出てきますが、アフガニスタンの地雷除去は1989年から始まりました。また、その後に説明がありますように、内外の合計15のNGO団体で4900人のアフガニスタン人が地雷除去作業にあたっています。この報告書が特に強調しているのは外国人の地雷除去指導者は10人もいないということです。つまり、外国人に頼らなくても自分達で地雷除去が出来ると言っているわけです。なぜ、こういうことを強調するかと言いますと、外国人の滞在費が高額だと言うことです。アフガニスタン人の場合だと大体月収が100ドルくらいですが、外国人の場合には1000ドルです。そんな贅沢な生活をしている人に応援して貰う必要は無いと言うわけです。職業難のアフガニスタンですから外国人を一人雇うなら、10人のアフガニスタン人を雇って欲しいというところです。もう一つは、アフガニスタンが地雷の被害に悩んできた期間は23年に及ぶということです。地雷除去の際に亡くなった人は、この10年間で68人、怪我をした人は500人位います。地雷除去は危険と隣り合わせの作業なのです。アフガニスタン人の地雷除去技術はそういう犠牲のもとに出来た除去技術だという誇りをもっています。団体の主なものを見てみます。AMAAというのは、Afghan Mine Awareness Agencyでアフガニスタン地雷回避教育協会と言う意味です。ARCSというのはAfghan Red Crescent Societyでアフガニスタン赤新月社と言い、赤十字の回教徒国版です。ATCというのはAfghan Technical Consultantです。有名なものとしてはHALOと言うのがありますが、これはヘイロートラストと呼んでいます。Trust Hazardous Area Life Support Organization でこれは英国の団体でカンボジアにも来ています。難民を助ける会の「サニーちゃん」の売り上げで集まった募金で地雷の除去)をやっている団体です。OMARと言うのがあります。Organization for Mine Clearance and Afghan Rehabilitationなのですが、ここの代表のファゼールさんがACBL(アフガニスタン地雷廃絶キャンペーン)の代表でもあり、私たちには身近な団体です。HIというのはHandicap International で世界的に有名な団体です。本部がフランスとベルギーの両方にあります。珍しいのはBBCで英国放送協会(British Broadcasting Corporation)の略です。最後のページに予算の使い方と地雷除去状況が載っています。


 この後は、NHKの「週間子どもニュース」のビデオを見ていただきまた、話を進めたいと思います。(ビデオ視聴)
 皆さん既にご覧になっていたかも知れませんが映像で見ていただくと分かりやすいので見ていただきました。

 もう一度NGO会議にもどります。先ほどの資料を見ていただくと、「アフガニスタンに於ける地雷の現状」で「アフガニスタン国内で800平方キロメートルの土地に数百万個の地雷が埋設されています。」とあります。被災者は一週間に50人から100人と書いてありますが実際のところは誰にも分かりません。ICBLの出しているランドマイン・モニター2001年版では、一ヶ月に88人という数が報告されています。最近の報告では一ヶ月300人の被災者がいると言うのもあります。ともかくアメリカの攻撃が始まってから被災者の数が増えた事は間違いありません。なぜ、アメリカの攻撃が始まって地雷による被災者が増えたかをカンボジアの実例を参考に説明します。この表はカンボジアの過去20年間の地雷被災者数の変遷を表したものです。当然の事ですが、埋設された地雷が取り除かれて少なくなれば地雷による被災者は減少します。ところが、この表の途中で地雷による被災者が増えているところがあります。地雷の除去数は同じぐらいなのにどうしてでしょうか。それは、こういうことです。内戦にしろ、一寸した戦争にしろ、そういう事があると住民が戦争地域を離れて避難し、知らない土地に足を踏み入れる事になり、そこでは埋設地雷の情報が無いため、多くの人が地雷の被災者になると言う訳です。避難民が移動した時に地雷の被害が増えるのです。今回のアフガニスタンの場合にもかなり多くの人々が戦争を逃れてカブールから移動しました。知らない所に行くと地雷を踏むという事で、被災者はかなり増えているはずです。


 日本として地雷除去についてどういう約束をNGO会議でしたかと言いますと、「日本の支援」という所を見て下さい。金額は今年1月21日に約束した金額だそうです。交換公文というものがあって、それに調印して確定しました。不思議なことに、今1ドルが130円位ですが、日本政府は1ドル107円のレートを採用しています。さて、まず第一に国連開発計画(UNDP)United Nations Development Programという機構があり、そこを通じて地雷除去の関連機材を整備するために1,540万ドル(約16億円)を支出します。次に、国連人道問題調整事務所(UNOCHA)United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Assistance to Afghanistan の活動をマネージメントするために232万ドル(3億円)支出します。赤十字国際委員会(ICRC)International Committee for the Red Cross に100万ドル拠出します。内訳は78万ドル(8,346万円)が義足のために、22万ドル(2,354万円)が地雷回避教育(地雷被害を防ぐための方策;ビラ、パネル作成等)に使われます。


 先ほどNGOに閣僚会議で発言が許されなかったと言いましたが、その代わりにその会場で、会議の終了後、十数団体のNGOが記者会見を行いました。その中で日本への感謝とともに、次のようにも言っています。「アフガニスタンに援助をしたからといって、他の国への援助が減ることの無いようにお願いしたい。」実際のところ、年度単位の予算は決まっている訳ですから、アフガニスタンへの援助が増えればどこかの国への援助は減ることは避けられません。次に「今出せるお金はすぐ出して欲しい。」とも言っています。援助に期待している資金には政府の役人の給料も入っていますから、是非にもすぐ欲しい訳です。もう一つは「あくまで、アフガニスタンにおける地雷除去はアフガニスタン人主導にして貰いたい。」つまり、外国人の主導はだめだということです。なぜなら、アフガニスタンの人々は既に地雷除去の十分な技術を持っているからという訳です。最後に先ほども紹介しましたが「援助は単発でなく3年間とか5年間の継続的なものを望みたい。」ということです。これらの記者発表については各新聞とも余り大きく取り上げなかったのが残念です。


 さて、地雷の問題をお話しますと、世界に地雷が何個埋まっているかということが話題になります。ですが、誰も世界中の地雷を全て勘定した人はいません。勘定のしようも無いのです。先ほどのNHKテレビでは6千万個から7千万個と言っていましたが、これはアメリカ国務省の「Hidden Killer」という報告書の1998年版に載った数字です。1994年版では1億2千万個と言っています。ICBLはさらに計算をし直して、1999年版の「ランドマイン・モニター」で6千万個から7千万個という数字を掲載しています。続いて2000年、2001年にも「ランドマイン・モニター」が刊行されましたが、埋設地雷の数を論じても意味が無いということで、埋設地雷数を掲載しませんでした。代わりに地雷で被害を受けている国の数に注目するようになって、2000年版の「ランドマイン・モニター」では、88ヶ国と11の地域が被害を受けていると報告しています。地域と言うのは、国連で国と認められていない場所を指します。例えば、台湾、ゴラン高原、コソボ等がそれに当たります。2001年版では90ヶ国と11の地域と言っています。自由国民社の「地雷問題ハンドブック」からコピーした地雷埋設図と、フランスのハンディキャップ・インターナショナルが発表した「地雷の被害を受けた国々の地図」があります。世界を5つの地域に分けて5枚の地図になっています。(図示)
 
今、アフガニスタンで一番問題になっている不発弾はクラスター爆弾というものです。これはアメリカの爆撃機がクラスター爆弾を投下している写真です。こちらの写真はクラスター爆弾の「子ども爆弾」で一番多い場合には202個の子ども爆弾が一つのクラスター爆弾に入っています。クラスター爆弾の原理は、親爆弾が地表に近づくと蓋が開いて子ども爆弾が遠心力で放出されるというものです。この写真はアフガニスタンから持ち込まれたクラスター爆弾の子ども爆弾です。ジュースの缶くらいの大きさで色は黄色です。これは本当は地面に落ちた時に全部爆発するはずなのですが、中に不良品が1割から3割くらいあってそれが地表に残ります。問題なのは、食料援助で投下される食料も黄色だという事です。物の無いところでは地面に転がっている珍らしいものは何でも拾いますから、食料だと思ってこれを拾って被害に遭う人がかなりの数あります。クラスター爆弾、被害者の写真をお見せします。(写真展示)

 これを見て下さい。これはパキスタン側の難民キャンプですが、アフガニスタン・パキスタンの国境付近では両国に難民がいるのですが、支援はアフガニスタン支援であって、パキスタン支援では無いところに問題があります。

 (休憩後アフガニスタン支援についてのNHK番組ビデオを鑑賞)


 お配りした資料の中で、来週発行予定の会報の抜き刷りをご覧下さい。ファゼルさんの写真の載ったものです。その2ページ目に「地雷撤去作業に携わりたいのですが、受け入れてもらえますか。」という質問に対するファゼルさんの答えがあります。「ありがとうございます。しかし日本で活動を盛り上げて資金援助を増やすために活躍して欲しいです。」とあります。資金援助することが地雷廃絶に重要な事だからです。わざわざ日本からアフガニスタンに地雷を除去に来るより、日本国内で地雷の問題を人々に知って貰って、援助が必要であることを訴えて貰った方がありがたいという事です。私たちに出来ることということでお考え下さい。


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