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定期講演会記録23

第23回 中部地雷問題支援ネットワーク講演会
対人地雷問題を原点から見直す

〜アンゴラとカンボジアの対人地雷の状況から問題の本質を探る〜

開催日時   平成21年11月8日(日) 午後2時00分~4時00分
開催場所   なごやボランティア・NPOセンター  会議室
講  師   白井 敬二(中部地雷問題支援ネットワーク代表)
参加者    10名

1.対人地雷問題の解決に必要なこと

 最も大切なことは対人地雷の被害国の政府が国民の安全と生活の向上に向け、計画的かつ持続的な取り組みをする事である。

2.なぜアンゴラとカンボジアなのか

 両国ともかつて長く激しい内戦を経験した。大量の対人地雷が埋設され多くの被害者を出した世界有数の対人地雷汚染国である。内戦終結後には世界各国から多額の援助資金と援助要員・物資が注ぎ込まれてきた。しかし、ICBLのランドマイン・レポートによるとカンボジアの対人地雷は順調に除去が進んでいるのに対し、アンゴラの対人地雷除去は遅々として進まない。
 どうしてこんな差が出来てしまったのだろうかという素朴な疑問が出発点だった。

3.アンゴラとカンボジアの歴史

 (アンゴラの歴史)
*15世紀にポルトガルの植民地
*1975年に社会主義国として独立。同時に米国と南アフリカ白人政権の支援を受けた反政府勢力・アンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)との内戦が激化。政府側は50年代から採掘が始まっていた石油、UNITA側はダイヤモンドの密貿易をそれぞれ資金源として戦闘を続けた。(2002年4月和平協定成立)
 (カンボジアの歴史)
*802年 ジャヤヴァルマン2世によって国内が統一され、アンコール王朝が誕生
*1887年 フランス領インドシナ連邦成立 植民地となる
*1953年 フランスから完全なる独立を獲得
*1975年 クメール・ルージュを中心としたカンボジア民族統一戦線がプノンペンに入城し、「ポル・ポト政権」による恐怖政治が始まる
*1978年12月 ベトナム軍がカンボジアに侵攻
*1991年10月 パリ和平協定締結。国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の設立
*1993年 9月 新憲法発布。新生「カンボジア王国」が誕生

4.両国の共通点と相違点

(共通点)
1)両国とも一般市民の生活水準は低い。
2)両国とも亜熱帯気候で多くの風土病があるが医療水準が低く、平均余命が短い。
3)両国ともかつて植民地だった
4)両国ともかつて国内で激しい戦闘が行われいまだに地雷原がある。
5)両国とも最近7年以上政権が安定し、国内紛争は起こっていない。
6)両国とも対人地雷全面禁止条約に参加している。
7)両国とも国際的な支援を受けて対人地雷その他の戦争残存爆発物除去が進行中である。

(相違点)
1)アンゴラには鉱物資源(石油、ダイヤ)があるが、カンボジアにはない。
2)アンゴラでは鉱物資源の開発で急速な経済発展が進行中でGDPも急成長しているが、カンボジアの経済は緩やかに成長している。
3)カンボジアの主要産業は観光であるが、アンゴラに世界的観光地はない。
4)カンボジアでは国営の対人地雷除去機関が機能しているがアンゴラでは十分機能していない。
5)カンボジアはランドマイン・モニターレポートを完全に提出しているがアンゴラは一部報告が無い(地雷除去の実績など)。

5.数値が語るアンゴラとカンボジアの現状

面積人口.pngアンゴラ、カンボジアの面積・人口比較一人GDP比較.pngアンゴラ・カンボジア年別一人当たりGDP比較平均余命比較.pngアンゴラ・カンボジア男女別平均余命

援助額比較.pngアンゴラ・カンボジア年別支援額比較除去面積比較.pngアンゴラ・カンボジア年別地雷除去面積比較被害者数比較.pngアンゴラ・カンボジア年別対人地雷被害者数比較

6.数値から見えてくること

 *アンゴラの対人地雷汚染地域面積、対人地雷被害者数が異常に少ない
 *アンゴラではカンボジアに比較して対人地雷除去のコストが極めて高い
 *アンゴラ政府は対人地雷除去も含め、国民の福祉向上に熱心でない

7.支援を再考する

 アンゴラのような国の場合、各国政府やNGOが人、モノ、金(援助資金)をどれだけつぎ込んでも実際の対人地雷除去や人道支援に生かされていないと考えられる。こういう国には援助の仕方を考えなければならない。
 ひとつの基本的な解決策として「教育」がある。アンゴラにおける国内紛争は何が原因だったかと考えると、石油とダイヤモンドをバックにした富の独り占めを目指したところにある。富を持つ者が増々富を増大させようと躍起になるのは洋の東西を問わない。しかし、際限もない富の追求は大多数の国民を不幸に陥れ、常に不安定さを生む。むしろ富の分配こそが社会の豊かさと安定をもたらすことを学ぶべきである。実際アフリカのいくつかの国では国民全体を豊かにする政策がとられ、その成果が着々とあがっている国もある。そしてその基盤は「教育」である。
 貧しい者が裕福になるチャンスを得るために教育は大切である。富んだものが自分のみの幸せだけでなく。慈悲深く「全体の福祉向上」に目を開かせる教育も必要である。そして、こういう分野の援助の方がずっと援助の「花」が咲きやすいのだ。
 日本人はアフリカの国々で尊敬されているという。第二次世界大戦であれほど完膚なきまで壊滅状態になったにも関わらず、僅か50年くらいで、見事な復興を果たし、今や世界経済の中核にまでなっている。アフリカ諸国の人々にとってこれは奇跡であり、これを成し遂げた日本人は非常に好感と尊敬の念を持って迎えられているのだ。その日本人の有利さをもって基本的な教育分野でアンゴラ支援が出来ると思われる。

8.KOMATSUとTAKARA(民間企業の力)

 KOMATSUは言わずと知れた重機メーカーである。そのKOMTSUがアフガン、カンボジア、そしてアンゴラで対人地雷除去に取り組んでいる。当然ビジネスとしてやっているが、人道支援の美旗も掲げている。現地採用の職員にメンテから操縦まで全て教え込み、補修機材のサプライも面倒をみるという。長く続く事をいのりたい。TAKARAはKOMATSUと組んで、地雷除去機の模型を売り出している。継続的な支援目指しているという。一つのあり方だと思う。ただ、成果と今後の計画が分かりやすい形で公表されていないのは残念である。

9.終わりに

 今回は客観的なデータによってアンゴラとカンボジアの対人地雷問題復興の状況を説明した。しかし、実際現地で調査しなければ分からないことも多い。いずれは現地調査と支援に着手したいと考えている。


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