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定期講演会記録21

21回 中部地雷問題支援ネットワーク講演会
対人地雷問題は解決済み?

開催日時   平成20年10月12日(土) 午後2時~4時30分
開催場所   なごやボランティア・NPOセンター  会議室
講  師    白井 敬二
参加者    11名

  mds0804040846000-n1.jpgアンゴラの地雷被害者ミスコンmine3.jpgKOMATSUの地雷除去機3252260270.jpeg対人地雷のカニズム1022479679.jpeg典型的な対人地雷

 みなさんこんちは。中部地雷問題支援ネットワーク代表の白井敬二と申します。本日はお忙しい中、また大変遠方から、この対人地雷問題の講演にお運びいただき深く感謝申し上げます。
 ご存知のように今新聞やTVでしばしば報道されているのはクラスター爆弾です。容器のなかにたくさんの子爆弾を詰めた恐ろしい殺傷兵器で不発率が高く一般市民を傷つけるので当然禁止されるべきです。しかしながら今日私がお話をしたいのは対人地雷の問題です。なぜなら対人地雷の問題は今なお世界の約70ヶ国に6000万個も残っており、年間6000人弱の死傷者が生まれており、通算の被害生存者も約47万人に上っています。対人地雷問題は世界中で今なおとても深刻な問題なのです。
 ここで対人地雷について少しだけ説明したいと思います。対人地雷の歴史は古く明の時代まで遡ると言われていますが、実戦で使用され戦果を上げたのは南北戦争だと言われています。ただ、当時は「あまりに残酷で好ましからぬ兵器」という評価であったようです。その後対人地雷は第一次世界大戦にも使用されましたが、むしろこの戦争では対戦車地雷が注目を集めました。ところが第二次世界大戦でドイツが次々と新型の対人地雷を開発し実戦に使用して成果を上げたため、一躍注目を浴びることとなり凄まじい数の対人地雷が製造され使用されました。総数は2億個以上とも言われています。現在使われている350種類以上の対人地雷の大半は第二次世界大戦で開発されたものと言えます。現在世界中で貯蔵されている対人地雷は52ヶ国に1.8億個と推定されています。一方埋設されたままの対人地雷はおよそ6000万個と推定されています。
 対人地雷被害生存者についてお話します。彼らの多くは貧しい国の貧しい農民です。貧しさ故にそこが地雷原と分かっていても農耕のために足を踏み入れ被害に遭うのです。馬鹿げたことと思われるかも知れませんが彼らには生活がかかっているのです。女性や子供も薪拾いや水汲みのために地雷原に入っていくのです。しかしながら対人地雷の被害に遭ってしまうとそれは大変です。足を失うような大けがをすれば莫大な医療費が必要になります。貧しい農民にできる事は田畑を売るくらいしかお金の捻出方法がありません。全てを失ってなお、借金まで背負うのです。一家の大黒柱が対人地雷被害生存者となれば稼ぎ手を失った家族の窮状は目を覆うばかりです。また障害者として生きる事は多くの貧困な国では非常に困難な事でもあります。
 ここで対人地雷被害の発生モデルを示します。ある国で貧富の拡大、政治的・宗教的・民族的対立等が起こり、政治的な不安定状態が生まれます。そして政府と反政府勢力の対立が激化したところに大国が軍事的・政治的・例財的に介入しついには紛争が勃発します。そこで対人地雷が使用され被害者が発生します。時を経ず難民が発生し故郷を離れます。その後和平が訪れますがそのとき帰還する難民を待ち受けるのが地雷原で、また対人地雷被害者が発生するという訳です。対人地雷被害者の8割以上が一般市民(主に農民)であることがお分かりかと思います。
 対人地雷問題一般について数値を確認しておきます。いずれもランドマインレポート2007年版からの数値です。対人地雷全面禁止条約に参加している国の数は156ヶ国、対人地雷生産国は13ヶ国、対人地雷保有国は46ヶ国、新たに対人地雷を使用した国はロシアとミャンマーの2ヶ国です。被害関連では対人地雷および不発弾の被害のあった国は58ヶ国、死傷者も含めた対人地雷の犠牲者は5751人、支援を必要としている対人地雷被害生存者は473000人となっています。なお、対人地雷の犠牲者については調査の行き届かない国がかなりあり、「少なくとも」という言葉が必要です。
 次に各国および日本の対人地雷問題に対する援助額を見てみますと、2006年中の世界の支援総額は4.75億ドル(2005年は3.75億ドル)で過去最高です。一方日本は67.25億円(2005年は44.48億円)で1ドル120円と換算すると0.56億ドルとなります。この金額はかなりなものですが、イラク戦争の戦費は年間1700億ドル(1.6兆円)と言いますから微々たるものと言わざるを得ません。そしてこの支援の大半が対人地雷除去の費用に充てられていることも問題です。かねがねJCBLはせめて支援の半分は被害者支援に充てるべきだと主張してきました。しかしながら、かつての小渕総理大臣にJCBL代表が直接この件について話した時も、「対人地雷除去が優先」と頑に拒みました。なぜ、対人地雷除去にそれほどこだわるのかと言いますと、一つには一個の対人地雷を取り除けば一人が救われるという算術的な考え方があります。これは正しいでしょう。二つ目に、援助の成果が数値化しやすいことが挙げられます。例えばある国で60万個の対人地雷が埋まっているとします。ある年に援助資金で5万個の地雷を取り除いたと報告書が提出されれば、この計算ならあと11年で完全除去が出来ますから支援をよろしくお願いしますとなります。極めて分かりやすい話です。しかしながら、これが対人地雷被害生存者支援になると成果を数値化する事はとても難しいのです。人の人生の幸福度は数値化しにくいものです。また仮に対人地雷被害回避教育の回数が増えた事が対人地雷の犠牲者を減少させたとしても相関関係は絶対的なものとは言えないでしょう。多くのファクターが存在するからです。とは言うものの対人地雷被害生存者に対する支援に目を向けようとする兆しも世界的には見られるようになってきました。今後日本政府もこの方向に向くようJCBLも積極的に働きかけをして行きます。
 ここで突然ですが対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)について少しお話しておきます。時間の関係もありますので条文を読んだりはしません。特徴と意義および成果について手短に述べます。この条約は1997年に成立しました。対人地雷の使用、生産、貯蔵、移転(売買)を完全に禁止した条約でした。国際条約としては極めて異例だったが、成立にはNGOが積極的に関与し各国に影響力を行使し、貢献しました。国際条約として機能するかと危惧されたのですが、賛同する国だけが参加した条約でした。結果として参加しなかった国々の対人地雷使用をも抑制し対人地雷問題の解決に向けて非常に大きな足跡を残す事になりました。この条約の基本的な考え方が「人道主義」であったことも大きな特徴で、多くの国々の賛同を得た要因でした。もちろん40ヶ国あまりの未参加国が大量の対人地雷を保有し、地雷原も手つかずの状態になっている事は大きな問題す。
 さて、これからは細心の対人地雷問題に関するトピックを紹介します。まず、最初はアンゴラの対人地雷被害生存者によるミスコンテストです。こういったミスコンテストが好ましくないという批判があることは事実ですが、未だに1000万個を超える対人地雷が国土に埋まったままで、毎年300人以上が新たな対人地雷被害生存者になっている国としては何とか対人地雷問題に世界の耳目を集めたいと思うのも無理もないのでしょう。記事の一部を紹介します。「アンゴラでは27年間にわたる内戦が02年まで続き、埋められた地雷は1000万個をゆうに超えるともいわれる。和平締結後も除去作業が進まず、毎年300人以上が地雷の被害で死傷。これまでに手や脚などの切断手術を余儀なくされた人が8万人近くいるという。国連は4月4日を「地雷に関する啓発および地雷除去支援のための国際デー」に制定している。」(共同) 
 次の話題はカンボジアからです。対人地雷をチョコレートにして販売している例です。カンボジアでは対人地雷で多くの人々が傷ついているため対人地雷をタブーとして見る向きも多いのです。しかしながら現にカンボジアには埋設されたままの対人地雷が残っていますので、観光に着た人たちに関心を持ってもらう事も大切と考え販売を始めたと水津さん(日本食レストラン「芭蕉」のオーナー)は言います。
 次の紹介はもうすでにかなりの有名人となっているアキ・ラーさんです。彼は何度か日本のTVでも紹介された人で対人地雷を探知機も使わず手掘で除去してしまう対人地雷除去のエキスパートです。彼の作った地雷博物館は観光名所にもなりました。今はカナダのNGOの支援で新たな対人地雷博物館を建て、妻子とともに不幸な生い立ちや対人地雷被害にあった子どもたちを引き取り暮らしています。
 次はカンボジアの絹織物の復興に人生を掛ける人です。森本喜久男さんといいます。クメール織物研究所という絹織物の工房を運営し500名を超えるシェムリアップの人々(特に若いたち)に職を提供しています。彼は伝統絹織物を復興する活動を通じて対人地雷被害者の問題にも直面しました。彼の工房では対人地雷の被害で親を無くした若い女性も働いています。「伝統の森」建設のため新たに開墾した土地には対人地雷こそ無かったものの、不発弾が発見されました。前に紹介しましたアキ・ラーに対人地雷が埋設されていないか見てもらったそうです。
 次の話題は日本の対人地雷除去活動です。自衛隊を退職した人たちが自分たちの持つ不発弾処理技術を生かそうと始めた特定非営利活動法人です。団体の名は「JMAS(日本地雷処理を支援する会)」と言います。はじめはカンボジア、ラオスで不発弾除去を専門に活動していましたが、徐々に範囲を広げ、アフガニスタンで実績をあげ、アフリカでも活動を開始しようとしています。日本人が対人地雷除去をする唯一の団体として希有な存在です。
 KOMTUとTAKARAと言えば有名な重機メーカーと玩具メーカーですが、両社が協力して先に紹介したJMAS応援の寄付金プロジェクトを立ち上げたました。378円の対人地雷除去の玩具が一個売れると両社が5円ずつ合計10円をJMASに寄付するというものです。日本のメーカーがこの手の寄付をするケースは稀かと思います。レアものの玩具ですからどれだけの寄付が出来るか疑問視する向きもあると思いますが、今後の対人地雷問題支援の新しい形を先取りしたものと評価したいところです。
 最後は柴田知佐さんという立命館大学の学生さんです。彼女は対人地雷問題ではすでに相当有名です。といいますのは彼女の対人地雷問題入門の四コマ漫画が全国的に知られ学校の教材にもなったことがあるからです。小学5年生から始めた対人地雷廃絶活動は今も続いていて、先頃京都青年会議所が主催する第5回京都学生人間力大賞でグランプリを受賞しました。自分に出来る事をこつこつと積み重ねて行く事が対人地雷問題解決の一助になると力強く語っています。
 最後にもう一度申し上げたいのです。対人地雷被害生存者は苦しい生活環境の中で今も必死に生きています。対人地雷問題は決して過去の問題ではありません。現在進行中の深刻な問題なのです。どうか対人地雷被害生存者と彼らの家族のことを忘れず、今後も継続してご支援をいただきたいと申し上げ講演を終わります。熱心にお聞きいただき誠にありがとうございました、
 この後対人地雷問題に関するDVDを鑑賞した。


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