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定期講演会記録11

第11回 中部地雷問題支援ネットワーク定期学習会
クラスター爆弾と劣化ウラン弾

日 時  2003年7月12日 午前9時30分
場 所  名古屋国際センター
参加者  12名

 今回は地雷問題と共通の特性を持つ、クラスター爆弾と劣化ウラン弾について少しでも理解を深めていただきたいと願っての講演です。

 本日は早朝からお集まりいただきありがとうございます。私は中部地雷問題支援ネットワークの代表を務めます白井と申します。本日の演題は地雷問題とは少し離れるかも知れませんが、クラスター爆弾と劣化ウラン弾による深刻な被害を皆さんに知っていただきたいと思いました敢えて取り上げました。まず、クラスター爆弾と劣化ウラン弾の共通性についてお話しますと、第一に両者が長期に渡って一般市民を傷つけたり、殺したりする兵器だという事です。一瞬か長期に渡ってじわじわと身体を蝕むかとの違いはあるにしろ、一般市民に非常な苦しみを与える兵器だと言う点では共通しています。第二に残虐極まりない兵器だという事です。ジュネーブ協定という国際条約では、必要以上にひどい傷を市民に与える兵器の使用を禁止しているのですが、両者はこれを無視した大量破壊兵器と見なされています。クラスター爆弾の不発弾は大変不安定な代物でその除去には対人地雷よりも神経を使うと言う除去作業員もいます。一方劣化ウラン弾の不発弾は比較的取り扱いが容易と言えます。しかし、一旦爆発すると放射能物質が空気中や土壌あるいは水中に飛散してしまいますので、除去は実質的に不可能となってしまいます。第三に、クラスター爆弾も劣化ウラン弾も意図的に関連するニュースが隠蔽されている事です。特に劣化ウラン弾の問題は滅多にマスコミが報道する事がありません。ヨーロッパでは時折テレビや新聞に取り上げられますが、日本やアメリカではほとんどこの問題が取り上げられる事はありません。ただ、インターネットの ウエッブサイトでは豊富この問題を検索する事が出来ますので、一度試してみて下さい。共通点を申し上げましたが、これからそれぞれの特徴を見て行きたいと思います。また、お話を聞いていただいた後には、ビデオを見ていただく予定です。

 まず、クラスター爆弾ですが、日本語の翻訳では「収束爆弾」と呼ぶ場合もあります。構造を簡単に説明しますと大きな容器の中にたくさんの(200個から640個位の)小さな爆弾を入れておいて空から容器ごと落下させ、空中で小さな子弾を放出し広範囲にばらまき、子弾が地表に到達すると一斉に爆発するように設計された爆弾と言えます。他の種類のクラスター爆弾として大砲から打ち出すもの、弾道ミサイルの弾頭に取り付けられるもの、多弾発射システムで打ち出すもの等があります。これらはクラスター弾と呼ばれる事もあります。これらの中で一番よく知られているものが爆撃機から投下するタイプのものです。種類が何種類あるかという事については軍事機密に属する問題でもありますから厳密には分からないのですが、私がインターネットで調べた限りにおいて少なくとも31種類はあることが分かりました。次にお手元の資料「クラスター爆弾及びクラスター弾の使用された国とその数」を見ていただくと分かりますが、ラオスでは約9千万個の子弾がばらまかれ、不発率20%で約18百万個が不発弾として残っていると推定されています。イラクには湾岸戦争で約3千万個の子弾が投下され、内10%の3百万個が不発弾になっていると考えられています。旧ユーゴには約3万個、アフガニスタンには約25千個の不発の子弾があると目されています。そして今回のイラク戦争では現在公表されているだけで、約42万個の子弾が投下され、少なくともその内の5%、約2万個が不発弾になっていると考えられています。今後情報がさらに公開されればこの何倍もの数字になる可能性が濃厚です。市民の負傷者、死亡者の数も書いておきましたが、これもどこまで信頼出来る数字なのかはっきりしません。今回のイラク戦争で今までに分かっているだけでも少なくとも約200人の市民がクラスター爆弾の不発弾で死亡したと言われています。

 ここでクラスター爆弾の歴史について少しお話をしたいと思います。クラスター爆弾は1950年代にアメリカの軍産複合体がいかに効率よく敵部隊を殲滅するかを考えた上で開発された兵器です。つまり空中から多数の子爆弾をばらまき、爆発させることによって何百人単位の大部隊を一瞬にして殲滅するというアイデアが基本です。大変ひどい話なのですが、「被害者はほとんど肉片と化し、樹木の表面にこびりついていた。」というレポートを読んだことがあります。公式の発表では最初にクラスター爆弾がたくさん使われたのはラオスという事になっていますが、もちろんベトナムでも大量に使用されました。ラオスは本来アメリカが攻撃してはならない地域だったのですが、ベトナム戦争を口実に国際条約を破って大量のクラスター爆弾を投下したのです。その後イラク、旧ユーゴスラビア、アフガニスタン、そして再びイラクという順にクラスター爆弾が大量使用されてきた訳です。
 次にクラスター爆弾の問題点の「不発率」について再度お話したいと思います。不発弾は機械工学的に不可避のものでありやむを得ないものだとアメリカ軍および軍需産業関係者は説明しています。その不発率は公式の発表では2%から30%位だと言われています。この不発率のばらつきについて一部の反対論者から「軍産複合体は意図的に不発率を高めているのではないか。」と批判が出た位です。つまり、一旦クラスター爆弾を投下した後も、不発率を高めておけば、その地域を地雷原のようにしてしまう事が出来、次に進軍してくる敵部隊にも有効な防波堤になるというのがその批判の指摘する所です。この点について軍産複合体は何らのコメントもしていません。

 さらにクラスター爆弾の問題点を取り上げますと、その高い致死性です。クラスター爆弾ははじめから人を殺すことを目的として作られています。従ってクラスター爆弾によって被害を受けますと死亡することが非常に多くなります。地雷が殺すことではなく負傷させることを目的としているのと大きく異なる点です。クラスター爆弾によって子どもがいっぺんに7~8人も殺されたという事故の例も報告されています。ここにお見せするのがクラスター爆弾の子弾の模型です。もちろん爆発しません。この模型はアメリカのNGOが作成してJCBLに寄贈してくれたものです。このちょうど缶詰位の大きさの子弾の中には多量の火薬とそれを取り囲むように切れ目の入った鋼鉄がぎっしりと入っています。爆発すると360度に破片が飛び散り人を殺傷します。仮に生き残れたとしても醜い傷跡が体中に残ります。黄色い本体の上部に取り付けられた白い布は空気抵抗を利用した方向舵の役割を果たします。常に布が取り付けられた側が上になるようにして落下する訳です。今から回覧する写真はラオスのクラスター爆弾被害者です。そんな風に幼い子どもが毎日のように無惨に殺されているのです。なぜ子どもの被害者が多いのかという問題にも触れておきたいのですが、ご覧いただいているように黄色くて興味を惹くような形をしている事が最大の原因です。好奇心の強い子どもがつい触って見たくなるような色と形をしています。アフガニスタンで有名になった「蝶々地雷」についても言えるのですが、決して子どもをねらっている訳ではないのですが、空力学的に設計すると自然に子どもの目に止まりやすい形になってしまう様です。色がなぜ黄色なのかという点も判然とはしませんが、不発弾の発見が容易になるようにといった意味があるかも知れません。ただ、アフガニスタンの事例で、国連の空中投下救援物資の缶詰の色が黄色だったため、かなりの数のアフガニスタン人がクラスター爆弾を救援物資だと勘違いして被害に遭ったという事がありました。この時には子弾の色をオレンジにするなどとアメリカ軍関係者が発表したりしましたが、その後どうなったかは何の報告もありません。

 クラスター爆弾について最近、国内で新聞報道があった事を覚えていらっしゃる方もみえるかも知れません。自衛隊がクラスター爆弾を保有しているという内容の記事でした。今までその事実が隠されて来たとしてセンセーショナルに取り上げられ、高名な軍事評論家の江畑謙介氏も「初めて知った。」等とコメントしていました。ただ、私の知り合いの広報担当自衛官(大佐級)は自衛隊は何年も前からクラスター爆弾配備については市民向けに情報を公開してきたと言い切っています。それにしては知っている人が少なかった訳で、その程度にしか広報していなかったと言えるでしょう。記事の内容に触れますと、配備予算は総計158億円と公表されました。私見ではそんな予算はもっと別な装備にまわすべきだと思いますが、自衛隊側の説明では、敵が本土に上陸する事態において味方の損害を最小限に抑え敵の侵攻をくい止めるためには不可欠と言っています。この点については国会の答弁でも取り上げられ、「敵が上陸してくるような事態においては日本の航空兵力も相当被害を被っていると予想されたので、クラスター爆弾を投下出来るような戦闘機が残っているか非常に疑問だが防衛庁はどう考えるか。」という質問が野党議員から出されたと言われています。なるほどと思わせる意見だと思います。これに対する明確な回答はなかった様です。何にしても、防衛庁によれば、クラスター爆弾の調達は法的には全く問題がないという事でクラスター爆弾の廃棄の予定もないとしています。ちなみに自衛隊の購入したクラスター爆弾の公表価格は日本円で167万円位と言われていますから、割り算すると約9千発のクラスター爆弾が自衛隊に配備されていると思われます。ただし、これは軍事機密に属する事なので、日本政府も自衛隊も保有するクラスター爆弾の数については何の情報も発表していません。「保有するクラスター爆弾の個数を公表すること自体が自衛隊の戦闘継続能力を明らかにすることになり防衛上の脅威になるのでお答え出来ない。」というのが公式答弁の様です。

 自衛隊が購入したクラスター爆弾についてもう少し詳しく申し上げますと、アメリカ製のCBUー87/Bという名称です。CBUはCluster Bomb Unitの省略です。キャニスター(容器)の中に入った子弾及びその本体の総称としてユニットという言葉が使われています。この爆弾は実はかなり旧式のものです。アメリカ軍の払い下げ品を購入しているという事で、これは航空自衛隊の戦闘機でもいっしょの事です。
 クラスター爆弾に対してのNGO団体の態度についてお話します。JCBLは、クラスター爆弾を正式には地雷廃絶運動の対象とはしないというICBLの運動方針を遵守するとしてきましたが、その後の幾多の議論を経てJCBLは独自にクラスター爆弾の全廃に取り組むことを決めました。お手元に「私はクラスター爆弾を廃絶したい」と表題のついた用紙をお配りしたのですが、これがまさにJCBLの訴えです。ICBL自体も今では、クラスター爆弾はICBLの地雷廃絶運動の対象とはしないが、各国の地雷キャンペーンが独自にこの問題に取り組みキャンペーンを展開することは全く問題ないと言っています。この背景には地雷と同じあるいはそれ以上に市民に被害を及ぼすクラスター爆弾の問題に黙ってはいられないとする世界的な風潮に押されたといういきさつがあります。先ほどの用紙の裏面は署名簿になっていますので賛同される方がいらっしゃれば署名を集めJCBLまでファックスして下さい。

 クラスター爆弾の種類について少し補足しておきます。先ほど見ていただいた資料の表ー1の一番下にロック・アイという名前が出てきます。これは空中散布型なのですが主たる目標が戦車及び戦闘車両というものです。空中のキャニスターから数個の子弾が飛び出し自らの推進力で飛び回り戦車等の出す熱戦を発見すると自動的にその目標に爆弾を打ち出すように設計されています。もっとも、適当な目標物が発見できない場合には人やその他に向かって子弾を打ち出します。決して自爆はしないようです。
もう一つ申し上げておきたいのが表ー1の一番上にある、多連装ロケット発射機によって打ち出されるもの「M26弾頭」というものです。なぜかと申しますと、日本がこれを保有しているからです。実はこれについては私も全く知りませんでしたのでびっくりしました。新聞報道にも載っていません。おそらくあの自衛官はそれも以前に公表済と言うかもしれません。他の砲弾と一緒に予算計上されているとすると、先ほどの予算は158億円では済まない事になります。

クラスター爆弾は長期的に見れば効率の悪い武器になると思われます。と言うのは、いずれクラスター爆弾にも何らかの法的規制が加わる事が予想されるからです。そうなると除去の問題が出てくると思われますが、この点においてクラスター爆弾は非常にやっかいな代物です。土にもぐっているもの、木の枝に引っかかっているもの、水底にもぐっているものがありしかもそれ自体が非常に不安定で、すぐにも爆発する状態ですので除去はとても困難なのです。当然莫大な費用を要します。ただこういう観点は軍人には受け入れられない様です。
 今回私がクラスター爆弾を取り上げましたのは、地雷と同様に戦場になった国々で深刻な問題になっているクラスター爆弾の存在を広く知っていただきたかったからです。このことは、この後でお話しする劣化ウラン弾にも共通しています。今後長く皆さんがこの問題に関心を持ち続けていただきたいと願うものです。


 これから劣化ウラン弾の問題についてお話させていただきます。その前にまず、劣化ウランとは何かという事から説明させていただきます。ご存じのようにウラニウムを多く含むのが天然ウランの鉱石ですが、核燃料や原爆の材料になるウラン235は0.72%位しか含まれず、残りのほとんどは利用価値のないウラン238で99.27%です。実際には他の微量放射性物質(ウラン234)が0.0054%含まれています。取り出したいのはウラン235なのでこれを濃縮し、3~4%位にしますと核燃料に使えます。さらに濃縮して20%以上にすると核兵器の材料になります。この濃縮過程で残される天然ウランの絞りかすが劣化ウランと呼ばれます。つまり、天然ウラン中のウラン235の比率が0.72%を下回るものが劣化ウランと言われる(米国核規制委員会の定義)のですが、米国防総省によって劣化ウラン弾に転用されている劣化ウランの大半はウラン235の比率が0.2%程度のものです。言い換えると天然ウランを濃縮したあと残った物質でウラン238が99.8%まで高められたものが劣化ウランだとも言えます。ここで問題になるのが劣化ウランも依然として放射性物質だという事です。同じ重量の天然ウランと比較すると約60%の放射線を照射し続けているのです。「劣化」という言葉が「極めて安全な」という印象を与えがちなのですが実際には劣化ウランといえども危険な放射性物質に変わりがないことを是非覚えておいていただきたいと思います。TVのニュースで放射性物質の管理不備が話題になった折りに、対象が劣化ウランだったため軽く見られた事がありましたが、これは明らかに誤った認識です。
 劣化ウランの危険性について少し申し上げます。日本の法律によりますと一般の市民が年間に浴びても安全と規定された被爆放射線量は150ベクレルです。これを劣化ウランの量に換算しますと10ミリグラム(0.01グラム)くらいに相当するそうです。今、私の手元にある20ミリ機関砲弾一発の中には約150グラム(150000ミリグラム)の劣化ウランが埋め込まれていますから、一般人の年間被爆限界放射線量の15千倍に相当する放射線が一発の砲弾に入っているのです。ただし放射線の危険性は核物質の形状及び人体細胞との距離によって著しく変わってくる点にも注目すべきです。例えば、劣化ウランを使用した20ミリ機関砲弾が部屋の片隅においてあってもほとんど影響はありませんが、ペンダントのようにいつも身につけていれば皮膚癌などの危険性は飛躍的に高まります。また、20ミリ機関砲弾が炸裂して劣化ウランの微細な粉末が呼吸によって肺に蓄積されるなら非常に深刻な健康被害(肺癌など)が予想されます。

 では、劣化ウラン弾についてお話します。劣化ウラン弾はアメリカで1970年代に開発が進められました。理由の一つはロシアとの核軍備競争により1950年代以降大量の劣化ウランが生産された事です。先ほど申し上げたように劣化ウランと言えども有害な放射性物質に変わりありませんので保管には大変注意を払わなければなりませんでした。人家の近くに保管する訳にもいきませんし、海洋投棄は海洋汚染と糾弾されます。それで山奥に深い穴を掘って埋めたのですが、今度は放射性物質が地下水を汚染するという指摘を受けるようになりました。それで、人里離れた砂漠の一角に広大な劣化ウランの保管場所を作り、容器に入れて野積み状態で保管しました。こういう場所がアメリカ国内に三カ所あります。それでも劣化ウラン貯蔵容器そのものの劣化の問題は残っていますので抜本的な問題解決にはなっていません。その後も劣化ウランの量は増え続けています。原爆の生産と原子力発電所の稼働が終わらない限り増え続けるのです。再利用と処分は費用の面で保管コストを大きく上回りペイしないのも大きな問題です。資料3の表を見て下さい。アメリカの劣化ウラン貯蔵量はロシアと両翼を担っています。2002年12月現在で76万トンとなっています。ロシアは50万トンです。増え続ける劣化ウランがアメリカにとって大きな頭痛の種だった事は間違いないと思います。軍産複合体が知恵を出し合った事であろう事も容易に察しがつきます。彼らが目をつけたのが劣化ウランの特性でした。劣化ウランは比重でいうと鉛の1.7倍ほどもありとても重い物質なのです。また、硬度も相当高い物質です。彼らがこの劣化ウランを弾頭に使用する事を思いつくのにさほどの時間がかかったとは思えません。戦略的必要性の所産と言っても良いでしょう。重い物質が貫通能力に優れているのは常識ですし、これをただ同然の材料(劣化ウラン)で作る事は非常に合理的な選択だったと言えましょう。一つだけ抜け落ちたのが使用後の悪影響に関する考察でしたが、軍人や軍需産業の人間はそういう観点を持たないものです。彼らは最初に戦車を破壊する砲弾に劣化ウランを使用する事を考えました。戦車の装甲は約18センチメートルもあり、普通の砲弾では貫通出来ません。跳ね返されることもあります。次に考えた対象が、地下深くに構築されたコンクリートの基地でした。これも通常の爆弾や砲弾では破壊できない代物でした。一例を申し上げますとアメリカ軍の開発による劣化ウラン弾頭をつけた「バンカーバスター」は地下30メートルに構築された基地も攻撃可能と言われています。ここで劣化ウランの特性を一つ追加させていただきます。それは、劣化ウランが比較的低い温度で発火し高温で燃焼するということです。1100度C位で発火し燃焼温度は3000度Cに達すると言われています。戦車の装甲を貫き戦車内部で爆発し高温で燃焼し、兵士を焼き殺し、砲弾の誘爆を引き起こすのです。
劣化ウラン弾の実戦配備は1970年代後半には終わっていたらしいのですが、本格的に実戦使用されたのは1991年の湾岸戦争でした。この時には劣化ウラン弾の危険性を指摘する世論はなかったので軍は何の制約も受けず、大量の劣化ウラン弾(砲弾)を使用しました。Aー10戦闘爆撃機から発射された30ミリ機関砲弾は約95万発に昇り、この分だけで約280トンの劣化ウランがイラクの地に打ち出されたことになります。最終的には他のミサイルや爆弾の分を含め総計約320トンの劣化ウランが投下されたと報告されています。ここに湾岸戦争で使われた砲弾の図がありますのでご覧下さい。また、別の図で劣化ウラン弾がどのように空中で分離されるかも見て下さい。アルミ製の外装が射出後に分離され、最後は長い重い劣化ウラン弾頭が戦車に突き刺さるように打ち付けられるのです。その結果このように戦車にきれいな丸い穴がうがたれます。中では兵員が黒こげ状態になります。砲弾がシェルターの壁を突き破って爆発するという事故が戦争中にあって、何百人も亡くなった時の写真はすさまじく、壁に子どもの目玉や髪、皮膚が焼き付けられていました。

 劣化ウラン弾の危険性についてさらに説明を加えさせていただきます。劣化ウラン弾は先ほど申し上げたように爆発炎上して空気中にエアゾル化してばらまかれた場合に危険性が飛躍的に増大します。エアゾル化した劣化ウランの粉末はたばこの煙の粒子と同じくらいの大きさで約5ミクロンと言われています。この大きさですので空気中に浮遊します。風がありますとずいぶん遠方まで運ばれます。一説によると40キロメートルも流されると言います。もちろん砂漠の砂塵が吹き荒れる季節とそうでない季節では大きな差が生じる違いありません。エアゾル化した劣化ウランは呼吸によって容易に人体に吸入されます。もし水に溶けていれば飲み水を飲むときに体内に取り入れられます。濾過は不可能ですし、そのような設備もありません。傷口から入るかも知れません。一旦体内に劣化ウランが取り込まれますと愛煙家の肺がタールで真っ黒になるように、身体の外には容易に排出されません。排泄には何十年もかかると言われています。劣化ウランは半減期45億年の放射性物質ですから、それが体内の一カ所に留まることによって、放射されるガンマ線が細胞レベルまたは遺伝子レベルで人体に影響を与えることはまず間違いのない所です。結果癌や先天性奇形児の発生などが起こされると言われています。ここにお見せする無脳症の子、アザラシ症の子なども劣化ウラン弾の影響によって発生したと考えられています。ここで一つ問題があります。果たして劣化ウラン弾の使用と各種癌の発生増大、先天性奇形児の発生などが本当に因果関係にあるかという事です。イラクでは生物化学兵器が使われた実績がありますので余計にこの問題が強調されるのです。アメリカ国防省は正式に劣化ウラン弾とアメリカ軍兵士及び家族の各種の異常(湾岸戦争症候群)との因果関係を否定しています。しかし他の地域での戦争、例えばバルカン戦争(コソボ)に於ける従軍兵士及び家族にも同様の症状が出ていることを考えると、原因として劣化ウラン弾の使用を挙げざるを得ないとするのが複数の医療関係者の意見です。アメリカ軍は劣化ウラン弾と従軍兵士及びその家族の疾病との因果関係を認めませんが、根拠も一切示しません。一方NGOのグループは多くの因果関係を示唆する統計資料を提出しています。この点からも因果関係ありとする側に正当性があると考えられます。

 資料4の数字を見て下さい。湾岸戦争従軍帰還兵の「湾岸症候群?」という資料ですが、湾岸戦争従事者が696,628人でそのうち体調の異変を訴え、復員軍人局に医療を要求しているものが263,000人、病気や傷害による就労等の不能に対する補償要求をしている者が185,780人です。重複があるにしても非常に大きな数字です。何よりも復員後死亡した者9600人という数字は大きすぎないでしょうか。戦争に行かされる者のほとんどは20代や30代の健康な若者です。その人達が10年で約1.3パーセントも死亡するのは数値的に高すぎる気がします。
資料5はサラエボにおける各種癌の年別発生件数です。エアゾル化した劣化ウランが体内に取り込まれて癌が発生するまでに何年もかかるという説がありますが、1998年あたりから各種癌の発生が一斉に上昇しているのはこれを裏付けているのかも知れません。消化器癌、呼吸器癌、乳癌、リンパ腫の発生が高いのですが、これは次の資料6のバスラでの子どもの悪性腫瘍発生件数推移でも白血病とリンパ腫に顕著な増加が見られ両者の共通な傾向が見られます。

 日本における劣化ウラン弾の実態について少しお話ししますが、日本国内にも劣化ウラン弾はあります。しかしそれは自衛隊のものではなく在日アメリカ軍のものです。かつて自衛隊にも導入が検討された時期があったそうですが、唯一の被爆国である日本の国民感情が導入をとても許さないだろうとして断念したと言うことです。在日アメリカ軍は公式に相当数の劣化ウラン弾を貯蔵していることを認めていますがその数は明らかにしていません。劣化ウラン弾は核兵器だという意見があります。実際その通りだと思います。それでは非核三原則に基づいて原水爆禁止運動が劣化ウラン貯蔵をやり玉に挙げたかというとそうではありません。この点についてはなぜなのか良く分からないところです。劣化ウラン弾のニュースが少ないからかも知れません。一つ国内における劣化ウラン関連のニュースをお伝えしますと、1995年12月から1996年1月の間にアメリカ軍戦闘機が鳥島で劣化ウラン弾を誤射撃したことがあって沖縄県がアメリカ軍に猛烈に抗議したという事件がありましたが、ほとんどの人は知らなかったと思います。なお劣化ウラン弾の危険性について後日調査が行われましたが、一応危険性無しという結果だったそうです。しかしながら放射能の残存性が長いことを考えると今後さらなる追跡調査が必要だと思われます。
 劣化ウランは兵器だけでなく別の所でも使われているという事をお話したいと思います。一つの使い方として航空機のフラップの重りとして使われます。フラップは空気抵抗で航空機に揚力を与えますが、フラップにかかる風圧は大変強いのでこれに対抗する重りとして劣化ウランが使われると言うことです。かつては多くの劣化ウランがフラップに使われていたため、法規の定めで消防署に放射性物質の保管場所の届け出をした上で、空港の一角に重り用の予備の劣化ウランが保管されていました。しかしながら、1985年の御巣鷹山日航機墜落事故を契機に、劣化ウランの危険性が指摘されるようになったため徐々にタングステンの重りに取り替えられて来ています。あの当時事故現場の発見から救助隊派遣までに10時間以上かかって被害者家族から批判が相次いだのですが、その主要な原因として積み荷の放射性物質とフラップに使われていた劣化ウランによる墜落現場の放射能汚染の確認作業があったと関係者が証言しています。結果として汚染はなかったと判断されたようですが、そのために救助活動が遅れ助かる人も助からなかったと批判されたのは致し方ないことだと言えます。劣化ウランからタングステンに重りを変更したと先ほど申し上げましたが、タングステンは非常に堅くて加工がしにくく高価でもありますので、一部の航空機には依然として劣化ウランが使われているようです。

 劣化ウラン弾の問題は今までほとんどテレビや新聞で報道されることもなかったため、日本人には全くなじみの無い問題だったと思います。私自身も劣化ウランという言葉は知っていましたが、それがこれほど大量に戦争に使われ、その結果非常に多くの人達が被害に苦しんでいる事は知りませんでした。たまたま栄でイラクの劣化ウラン弾被害者の写真展を見てそのあまりのひどさにこうして講演会でクラスター爆弾と一緒に取り上げた次第です。
劣化ウラン弾についてはアメリカ軍が劣化ウラン弾と癌や先天性奇形児の発生、身体の不調等との因果関係を否定していることが大変深刻な問題なのです。なぜ彼らがそれほどまでに躍起になって否定するのかを考えてみますと、一つには先ほど見ていただいた資料4の263,000人の訴えをまともに取り上げそれを劣化ウラン弾のせいだと認めれば莫大な治療費と補償をしなければならなくなる事が指摘出来ます。さらに、そんな味方にとっても危険な劣化ウラン弾という兵器の使用が出来なくなる可能性が高い点です。湾岸戦争で優秀な成績を収めたため今や劣化ウラン弾は兵器ビジネスでは超売れ筋の人気商品です。そんな大切な商品を国際的に禁止されてはかなわないという軍産複合体の思惑がはっきり読みとれる反応と言えます。今回のイラク戦争でもアメリカ軍が(イギリス軍も)劣化ウラン弾を使用したであろう事はまず間違いのないところですが、アメリカ軍もイギリス軍も公式にはそれを認めていません。一部の軍内部情報が漏れて劣化ウラン弾使用がやっと確認できているのが現状です。彼らによれば、バンカーバスターのような爆弾に劣化ウランが使用されているのは全く当たり前の話で疑問の余地が無いのだそうです。彼ら軍人は一般市民への放射能の悪影響など全く歯牙にもかけていません。戦術的に最も効果的な兵器を選んで効率よく敵を壊滅させる事がいつも彼らの最優先事項であり時には味方の被害さえも無視するのです。

 最後に申し上げたいのは、劣化ウラン弾については一般市民への大変深刻な被害があることが明白であるにも関わらず、今後もメディアで広くその危険性が訴えかけられる事は無いと思われることです。それは政府が意図的に情報を操作しているからです。ただ、インターネットの世界では情報の取得が自由に出来ます。今後とも劣化ウラン弾の問題の関連情報を英語媒体も含め広く継続的に追っていただき、少なくとも日本の自衛隊がこのような武器を永久に持たないよう監視していただきたいと思います。書籍を一冊紹介いたしますと「放射能兵器劣化ウラン」という本で、劣化ウラン研究会という団体が執筆しています。これ一冊で劣化ウラン弾の問題はほとんど理解出来ると思います。


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