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定期講演会記録1

 第1回 中部地雷問題支援ネットワーク講演会
最新地雷関連問題あれこれ

開催日時   1999年12月23日
開催場所   名古屋市瑞穂生涯学習センター
講  師   JCBL運営委員 清水俊弘氏
参  加   13名

(講演の要約)

1.カンボジアにおける私の活動歴(自己紹介を兼ねて)

 1987年よりJVC(日本国際ボランティアセンター)職員。最初の任地がタイとカンボジアの国境にあった難民キャンプ。そこには10万人以上のカンボジア難民がいましたが、その中でJVCは将来帰国又は外国に定住した時に、すぐに職につけれるように職業訓練のプロジェクトを実施していた。その中で職業訓練を受ける優先順位をつける必要があった。当時、地雷により手足を失った人々が多く存在し、最優先で職業訓練を受けさせるべきと考えた。そのために赤十字国際委員会、ハンディキャップインターナショナルと連携し、リハビリを終えた地雷被害者に優先的に職業訓練を実施した。これが私が地雷被害者と接触を持った初めての機会だった。私達の対象は主に青年層だったが、幼い子供達の地雷被害者も多く目にし、地雷被害の無差別性を認識させられた。
 JVCはタイ・カンボジア国境の難民支援活動をしていく内に、カンボジア国内に残った人々への支援がより重要と考えるようになり、1988年よりその活動の拠点をカンボジア国内に徐々に移行していった。その中で目にしたのがポルポト派による大量虐殺の痕跡だった。

2.戦乱と住民の苦しみ

 1980年代にはポルポト派は新政権に追われタイ国境周辺に追いやられていたが、ゲリラとなって山間部に潜み反撃の機会をうかがっていた。この難民キャンプを隠れみのとしたポルポト派ゲリラ対新政権およびベトナム軍との対立関係は1980年から1993年まで続いた。その結果タイ・カンボジア国境には数百万個の地雷が埋められたままとなった。また、それ以前にベトナム戦争でアメリカ軍が使用した爆弾の不発弾もすでに多数残されていて、地雷同様の深刻な被害を住民に与えることになった。現在推定されている地雷と不発弾の数は400万個~600万個と言われており、住民の受ける被害は非常に深刻である。住民は戦闘により家・土地を奪われ、戦闘終了後には地雷・不発弾の被害にさらされると言う二重、三重の苦しみを味遭わされてきたといえる。

3.カンボジアにおけるJVCの活動内容

 農村の人々のために、「井戸掘り」、「米銀行」(米の貸し借り)、「家畜銀行」(家畜の貸し借り)、化学肥料や農薬に頼らない「自然農業」の普及を行ってきている。

4.地雷被害の意味

 地雷被害を受けると現金収入の道を断たれてしまう。(例えばオオギヤシの樹液を取り、砂糖、ヤシ酒になど加工して売る事も、重い樹液を運搬する人が対人地雷等で傷つけば不可能となってしまう。加えて、治療に掛かる費用は一家の蓄えを失わせ生活費も切りつめなくてはならなくなる。地雷被害者のうち適切な治療とリハビリを受け、手に職を持つことの出来る場合は希で、多くの場合には労働力として期待できない者として、ひっそりと村で生きて行かざるを得ないのが現実である。

5.カンボジアの抱える問題は地雷問題だけではない

 私が地雷問題の原稿を初めて書いたのは1992年頃だが、当時カンボジアの三大死亡原因は1)結核、2)マラリア、3)地雷の順だった。カンボジアの抱える問題は地雷問題だけでは決して無く、結核・マラリアを代表とする病気の蔓延、そして過度の森林伐採による自然資源の枯渇など幅広いものがある。

6.対人地雷全面禁止条約の問題点

 例えば「指向性散弾」はワイヤーで罠を張り、誰かが触れると爆発させる仕組みで対人地雷全面禁止条約の対象だが、これがリモコンになれば条約の対象にならないため、対人地雷の代替兵器として開発している国がある。また、対人地雷と変わらない小型の地雷でも対戦車地雷を取り扱わせないためのため(除去出来ないようにするため)に周囲に敷設される地雷(少し傾斜すると爆発するもの、光が当たると爆発するもの、地雷探知機の磁力波によって爆発するもの等々)は条約の対象外とされていることも問題である。今後は条約の改定を通じ、こうした抜け道を防ぐ努力が必要である。

7.対人地雷全面禁止条約発効による変化

 1999年3月1日に対人地雷全面禁止条約が発効したことにより、対人地雷生産国が従来54カ国あったが16カ国(8カ国はアジア)に減少した。

8.統計からみるカンボジアにおけ地雷被害者数の変化

 1979年にポルポト政権は終焉を迎えたが、この年に地雷被害者が多く出た。これは多くの国外にのがれていた難民が移動(帰国)した際に、多数地雷原に足を踏み入れた事が原因である。翌年には地雷の危険性が遍く知られるところとなり被害者数は激減している。しかし、ポルポト派ゲリラの反抗が激しくなると地雷埋設も新たに行われ、戦火を避けて逃げまどう難民がまた地雷被害に遭うことになり、地雷被害者数が再び増加している。1979年から1997年までに約37000人が地雷被害に遭った。最近では、1998年に1300人、1999年に1000人程が地雷被害に遭ったと報告されている。季節的には人々の移動が盛んになる乾季に被害が集中している。1997年になって大幅に地雷被害が減少したのは地雷除去作業が進んだこと、地雷回避教育の効果が出たこともあげられるが、一番の原因は地雷原の特定が進み、危険区域への立ち入り制限が徹底したことと考えられている。

9.地雷除去の二つの方法

 1)軍事的除去・・軍隊の作戦行動に最低限必要な範囲で地雷除去をする(不完全除去)
 2)人道的除去・・人が安心して暮らしていけるための地雷除去(完全除去)

10.対人地雷と不発弾

 1997年の1369人の被害者の内23%は不発弾によるものであり、残り77%が対人地雷による被害という。不発弾による被害も深刻である。

11.なぜ対人地雷被害が無くならないのか

 カンボジアは国策として海外資本の導入を目指した。その結果インドネシア、マレーシア、シンガポール、香港、日本から多くの資本家がカンボジアで工場やプランテーションの経営に乗り出した。資本家達は豊富な資金力と政府中枢との親密な関係から、安全で利用しやすい土地を占有してきている。一方貧困な農民達が農耕に適した豊かで安全な土地を手に入れることは極めて困難な状況である。彼らは、否応なしに地雷の埋まっている可能性のある危険な土地に止まらざるを得ないのである。このことが地雷被害の無くならない大きな原因になっている。地雷被害の減少を阻んでいるのは実は経済問題なのである。

12.カンボジアの地雷被害と日本の経済支援

 カンボジアの国家予算の半分は諸外国の援助にたよっている(アメリカ、日本、ヨーロッパ等)。そしてその援助のうち四分の一は日本の援助なのである。しかし、日本の援助のほとんどは首都機能の拡充にあてられており、農村の人々の生活を良くするというより、むしろ圧迫する結果になっている。日本人は日本が行う援助がどのように使われるかを学び、注文を付けることが必要である。

13.対人地雷全面禁止条約発効の効力

 1999年3月1日条約が発効したが、これによって、条約の批准国には以下のような義務が課せられるようになった。
 1)現在保有する対人地雷の種類と数を事務総長に文書で報告する。
 2)2003年3月1日までの保有地雷破壊の計画を国連事務総長に文書で報告する。
 3)2009年3月1日までの埋設地雷の除去・破壊の計画を国連事務総長に文書で報告する。

14.対人地雷全面禁止条約の署名・批准状況

 署名国・・・136カ国。 批准国・・・89カ国。(1999年12月23日現在)批准していない国にはアメリカ、中国、インド等の大国があり、これらの国々に署名・批准させることがこれからの重要な課題。

15. クラスター爆弾について

 空中から散布される小型の爆弾。小型容器に入った、202個の缶詰大の容器に爆薬と数百個の鉄球が入っており、空中で爆破すると鉄球が猛烈な速さで球状に飛散し、多数の人間を無差別に殺傷する。物陰に隠れていても跳弾となった鉄球で殺傷されることになる。もともと空港などの施設を破壊する用途で開発されたものが対人用に転用され、コソボで大量に使用された。クラスター爆弾は他の爆弾同様不発弾を生じる。その比率は5%程であるが、地上に落ちているクラスター爆弾は人が触ることによって容易に爆発する。
 クラスター爆弾の不発弾による被害の深刻さは埋設される対人地雷の被害と何ら変わるものではない。ICBLの中でもクラスター爆弾を対人地雷禁止条約の対象の範疇に入れるべきと言う強い意見がある。しかし、対人地雷一つに絞っての運動でもまだ完全な成果が上げられていない事をふまえた意見が優勢で、条約の対象に追加するという合意には至っていない。

16. 種々の問題と取り組みあれこれ

 1)世界中に7千万個とも8千万個ともいわれている埋設地雷があるが、これをどう除去していくか・・・地雷除去後の土地に本当に住むべき農民達が住めるかをきちんと確認したうえで支援すべきで、一部の富裕な人々や軍人達に安全な土地が取られてしまうのでは本来の目的にかなっているとは言えない。地雷除去の社会的影響を検討しなければならないということでJVCでは、現地の人々の協力で調査に取りかかる予定である。
 2)対人地雷地雷の被害者支援の新しい方向・・・対人地雷の被害者の住む村落はほとんどの場合幹線道路から数時間以上離れたところにあり、容易に自動車も入り込めない。一方病院やリハビリ施設は町にしかなく被害者は通院も義足修理等もままならない。JCBLは地雷被害者のための移動サービス(義足の交換、修理等)の支援を実施しようとしている。
 3)日本の100万個の地雷廃棄について・・・日本は訓練用の1万5000個を除き全て2003年3月1日までに廃棄する予定。廃棄処理は「旭化成」、「日本油脂」、「日本工機」の民間企業三社である。廃棄試験は完了しており、平成12年1月17日から本格廃棄にはいる。当日は公開廃棄が予定されており、小渕首相も参列する。JCBLからも何人かが立ち会う予定でいる。この日が、単に地雷廃棄開始のセレモニーに終わらず、対人地雷の被害者支援に一般の人々の関心を向けさせる機会になるようにしたいと考えている。
 4)アジアの対人地雷批准国を増やす取り組み(年賀状キャンペーン)・・・アジアの条約未署名・未批准国大使館に年賀状の形で署名・批准を要望する運動を実施した。


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